「月光花」
・第8話:「月光花(月に照らされて咲く花)」



「私は、見てしまったのです。」
「あれは・・・・何気なく外を見たときでした。近くにあるショッピングモールから何かざわついた感じがしたのです。」
「不思議に思い目を凝らしてみると、見慣れた2人の姿がそこにありました。」
「なにか、分からないものと戦っています。いえ、分からないというか、見たことの無い生物―――・・・あれは生物なのでしょうか?」
「もっとよく目を凝らしてみようとしたとき・・・・急に胸に痛みが走りました。」
「体中が熱く、胃の中のものは全部出てしまいました。でも、吐き気と胸の痛みは続き、私は胃液をはきながらその場で気絶してしまいました。」



ガララ・・・・
教室の戸が開く。ここ最近急に寒くなってきているので、暖房をつけているために教室の戸は閉められている。
ソフィ「おはようございます」
クリス「おはよ・・・」
音葉「おはよ〜」
琴璃「おはようござます〜」
そこには、音葉、琴璃ともう一人しかいなかった。時間はまだ8時30分ちょっとすぎなので誰もいなかった。
クリス「・・・・・ふ〜くん・・・おはよ。」
クリスが照れながら挨拶をする。冬もイヤホンを取って
冬「うん、おはよう。」
冬は頭を少し下げて挨拶した。
ソフィ「おはようございます〜。」
冬「おはよ〜」
そうして2人は自分の席につく。
音葉「ねえ、2人とも・・・ちょっといい?」
二人が席に着いたと同時に音葉と琴璃がやってきた。
クリス「どうしたの?」
琴璃(鬼海のことです・・・・)
ソフィ(何か分かったのですか?)
音葉(分かったというか・・・鬼海は矢合観音にいます)
クリス(なんだって!じゃあ、すぐにでも・・・・)
琴璃(それは無理です・・・・鬼海は矢合観音の神様・・・冬樹さまを取り込んでしまったためかなり強くなってしまいました・・・)
クリス(え・・・・それって・・・・)
ソフィ(今の霊力では到底太刀打ちできない、という事ですね・・・・)
音葉(うん・・・・残念ながらそうなるね・・・・)
クリス(でも・・・私たちはソマリアさんと、音葉ちゃんたちは紺さんの下で強くなっているはずでしょ?)
琴璃(それもそうなのですが・・・・昔の私たちが1として、今の私たちを100とすると、いまの鬼海は1000だそうです・・・・)
ソフィ(せ、千ですか!?・・・・・え?でも・・・あと何日間で完全体になって動けるようになってしまうのですよね・・・・)
音葉(うん・・・それ負が大体5日後なんだって、それで、私たちはぎりぎりまだ羽化していない日の4日後に攻撃する事になったの。)
クリス(それまでに、霊力って太刀打ちできるまで上がるの?)
琴璃(一人では無理だけど・・・4人集まれば倒せない事も無いそうです。今は100であと4日で200まであげれるそうですよ・・・・)
ソフィ(単純計算で1000対800ですか・・・・差はかなりありますが攻め方によってはいけますね・・・)
音葉(ここが踏ん張りどころだから皆がんばろうね!)
琴璃(ええ!)
ソフィ(冬さんのためにもがんばりましょう!)
クリス(も〜・・・・そこまで面倒見なくていいよぉ・・・・)
キーンコーンカーンコーン・・・・
どうやら話していたら10分間過ぎていたようだった。いつのまにか教室が騒がしい。
先生「よし、室長、号令!」
また、学校生活が始まった。




ソフィ「お姉ちゃん、かえりましょう。」
やっとの事学校が終わった。みんな、身支度をして帰っていく。
クリス「ん・・・先に帰っていて、ちょっとやることあるから。」
別にクリスには特に用事は無かった。しかし、今日は一人で家に帰りたい気分だったのだ。
冬「あれ・・・悠さん帰ってしまったかな・・・・まあ、生徒会でちょっと時間が遅くなったからなぁ。」
冬がポツンと残っていた。室長という身分のため、生徒会活動に出ないといけないときがあるのだ。そのために一人で帰ることも多々あることだった。
クリス「ふ〜くん?どうしたの?」
冬「あ、クリスか・・・いや、生徒会で残されてたら友達にも残されちゃって・・・・」
ポリポリと頭をかきながらわらう。
冬「まあ、しょうがないか・・・・では、また学校で〜」
リュックを急いで背負い、教室を出ようとする。
クリス「まって・・あの、一緒に帰らない?」
冬「え?」
自分でも不思議だった。わざわざソフィをだましてでも一人で帰ろうとしていたのに、思いがけず冬に帰らないか?といってしまったのだ。
冬「いいよ。たまには周りに見栄を張りたい。・・・なんてね」
人生生きている=彼女いない暦の冬にとって彼女の存在は憧れだった。まあ、冬にとってまだまだクリスは彼女という感覚は無くて縁の深い友だちといった感じを持っていた。
クリス「ふふふ・・・・いこっか?」
冬「うん。」
2人は昇降口に向かう。3年生の教室は1階にあり階段は無いのだがなぜか、3、4組の下駄箱が近くの下駄箱でなく、遠い下駄縛なのだ。だから教室を出てしばらく歩かなくてはならない。
冬「でも、どうしたの?急に?」
クリス「ううん、なんか・・・一人で帰るのさびしくなちゃって・・・・」
はぁ〜と息を漏らす。ふちの周りは息が白くなる。
冬「いつもソフィと帰ってるよね?それはどうしたの?」
なぜかいつもの様に話せない。何かぎこちない会話になっている。
クリス「さっきまでは一人で帰りたかったけど、急に気が変わちゃって・・・」
冬「ふぅん・・・・何かや悩んでいるのかな?」
クリス「うん・・・・・どうなのかな?悩んでいるというか不安に思っているのかな?」
冬「・・・何があったかは聞かないけど、不安に思う事があるんだね?」
クリス「たぶん・・・・・・」
冬「じゃあ、その不安要素をなくしていけばいい。」
クリス「いいえ、それは無理だよ、私にはできない・・・・」
鬼海に勝つ見込みがクリスにはまったく無いのだ。
冬「じゃあ、不安要素を解決できるように自分を鍛えるんだよ。自分に自信がついてから立ち向けばいい。なにもあせらなくてもいいのだから」
クリス「でも・・・・時間が無いよ・・・・」
そう、いくらがんばって霊力をつけても100%鬼海に勝てるとは限らない。
冬「ふむ・・・・結構焦っているんだね・・・・」
クリス「うん・・・・でも私たちがやらないと皆が困る・・・・」
皆が困る、つまり世界の滅亡である。
冬「そんなに思いをつめなくていいと思うよ。僕はそんな皆の思いを背負っていけるような心を持っていないから、誰かのためだけに!にしちゃうかな?」
クリス「誰かのためだけに?」
冬「そう、好きな、誰々君のため誰々さんのために私はがんばる!とかにした方ががんばれるんじゃないかな?好きなものを前にすると人間ってがんばれる生き物だから・・・・」
クリス「誰かのため・・・・・・」
冬「そう、できるならその責任の重さを僕にも乗せていいから・・・・」
クリス「・・・・分け与える・・・」
冬「そう、クリスにはソフィちゃん、音葉さん、琴璃さんなど沢山の友達が居るじゃない、皆と助け合うのが友達の勤めでしょ?」
クリス「そうだね・・・・自分ひとりで考えるよりも皆で一緒に考えたほうがいいよね・・・」
冬「うん、そういうこと。」
クリス「ありがと、気が少し楽になったよ。」
冬「うん、表情も軽くなってる。」
バン!と手で拳銃の形を作りクリスに撃つまねをする。
クリス「・・・・ねえ、ふ〜くん?」
冬「ん?」
クリス「すこし・・・・寒くない?」
冬「まあ、今日は寒いかな・・・・」
クリス「じゃあ、暖めてあげる。」
ギュ・・・・
冬の右腕を全身で握る。
冬「え?ちょ・・・・」
クリス「ふ〜くんも寒いのでしょ・・・私も寒いの・・・」
冬「・・・・・・」
ポリポリ頭をかいて照れて黙ってしまう。
カチャン!チッチッチッ・・・・
冬は自転車の鍵を開けて引く。
冬「あれ?自転車は?」
クリス「今日、自転車の空気に抜けていたから、自転車屋さんに置いてきたの。」
冬「じゃあ、僕も押して帰るか。」
クリス「ごめんね。」
冬「ん?いいよ、たまには歩いて帰るのも悪くないし。」
冬とクリスは、ラッテリアの前まで一緒に帰る事にした。
クリス「ねえ、ふ〜くん。なんで絵とか小説とか書いてるの?」
冬「う〜ん・・・・そういえばこれっといった内容が無いんだよね。気がついたら絵を描いてました、小説を書いてました。だったから・・・」
クリス「え?そうなの?」
冬「まあ、中学校の友だち・・・僕は師匠って呼んでいるけどその人がすごく絵がうまくてね・・・その影響から絵を描き始めたんだと思う。」
クリス「友だちからの影響なんだ〜」
冬「うん、で、僕も描いていたらそれが趣味になって、いまでは職業にしたいと思うようになってきたんだよ。」
クリス「ふ〜ん・・・・意外に単純な理由なんだね。」
冬「そうだよ、人間の好き嫌いって案外単純なんだよ。クリスがシスターをやっているようにね。」
クリス「そうだね、私は親がシスターだったから、私もそれを引き継いでシスターになっただけだからね。」
冬「でも、食べていけるのかなぁ・・・・いまから心配しているのだよね・・・・」
クリス「ははは・・・・大丈夫だって、多分・・・・・・あ、励ましになっていないや。」
冬「うう、寒いなぁ・・・・」
クリス「まあ、路頭に迷ったら一食だけご馳走するから〜」
冬「え?少なくない?」
クリス「私の教会は宿じゃないですからね!」
冬「誰も2泊3泊しようと思ってないよ!」
クリス「ははは・・・・いつもと違うなぁ・・・・」
冬「え?なに?」
クリス「だって、ソフィと帰るときにこんなに笑った事無いもん。」
冬「僕がお笑い好きだからね・・・・だんだん話がずれていくんだよ。」
クリス「ほんとだ、最初に話した話題といつの間にか話が変わってる〜」
冬「奥義!話題すり替えの術!」
クリス「なにそれ〜・・・ははは〜」
冬「いや、自分にも分からない.。」
クリス「え〜使えないわざだなぁ・・・」
冬「言ったなぁ!まあ、使えないけどね〜。」
冬「っと、ついたよ。」
クリス「今日はありがとう。おかげで楽になったよ。」
冬「うん、よかった、」
クリス「こんな日・・・続くかな・・・?」
冬「それは、君の気持ちしだいだね。悩んでいるより行動を起こしたほうが自分も楽だと思うから・・・あと、それで失敗しても諦めがつくでしょ?」
クリス「うん、そうだね・・・・私もがんばってみるね。今日はありがとう。」
冬「ん、じゃあ、明日ね。」
クリス「明日〜。」
タッタッタッ・・・・・
クリスが駆け足で自転車屋さんに向かっていった。
冬「Puisque l'ange a ete attache a vous, absolument bien.」
【貴方には天使がついているから、絶対に大丈夫。】



クリス「ただいま〜」
ソフィ「おかえりなさい。」
クリス「外は寒いね〜」
エミカ「そうですよ〜だって、気温4度までしかあがないからね〜。」
ソフィ「私なんてこたつの芋虫ですよ。」
帰ってきてからソフィはこたつから一歩も出ていない。
エミカ「さっさと修行を終わらせてきてゆっくりしてください。」
クリス「うん、そうするね。」
ソフィ「じゃあ、お姉ちゃん私は先に行っていますね。」
クリス「うん、後から行くよ。」
クリスは自分の部屋に向かった。
シュル・・・ガサガサ・・・・・・
クリスは制服から修道服に着替える。
クリス「・・・・誰かのために力を使う・・・・守りたいものただ一人のために・・・・」
帰りに聴いた言葉を出しながら、もう一度意味を確かめる。
クリス「うん・・・・いまならできるような気がしてきたよ・・・」
着替え終わったクリスは教会に向かう。
クリス「おまたせ。」
ソマリア「ソフィさんから話は聞きました・・・・かなり事態は進んでいるようです。」
ソフィ「うん、一刻も早く力をつけておかないと・・・・」
ソマリア「今日の夜に夏樹様とお話しますからそこでどのように戦うのかを考えましょう。今は力をつけることに集中しましょう。」
ソフィ「はい・・・・・」
クリス「ん?ソフィ。元気ないね?」
ソフィ「うん・・・・私たちに皆の命がかかっていると思うと・・・・なんだか怖くなって・・・・」
ソフィもクリスと同じような不安があったのだ。
クリス「大丈夫。私たちには皆の命がかかっているけど、それは逆に私や音葉さん琴璃さんにも同じ事が言えるの。だから、ソフィ一人が背負っているわけではないでしょ?」
もちろんこの台詞は冬の受け売りである。
ソフィ「うん。」
クリス「一人だと支えるのが大変だけど、沢山いると楽になるでしょ?だから、私たちにもその思いを分けて・・・・・」
ソフィ「そうだよね、私一人だけが戦っているわけではないですよね。ありがとう・・・・気持ちが落ち着いたよ。」
クリス「うん、極端なことを言えば、好きな人に向けてこの思いをぶつけると良くなるかもね?」
ソマリア「そうですね、人間の愛は無限の可能性を持っています。前のクリスさんがそうでしたが、誰かを思う気持ちはどんな憎しみよりも強く、決して消える事はありません。その心を持っていれば、たとえ神様を取り込んだ、鬼海であっても倒せるでしょう。」
クリス「はい!」
ソフィ「はい!」
ソマリア「はい、2人ともいい目になりましたね・・・では、行きますよ。」
シュバン!ジュバン!
ソマリアは二体の式神をだす。
クリス「はぁぁぁぁぁ!!」
ソフィ「はぁぁぁぁぁ!!!」
2人とも霊力を開放して霊圧をあげる。
ソマリア「だいぶ霊力のほうは上がりましたね・・・・あとは、その霊力をどうやって生かすかですね・・・・・」
クリス「それ!」
クリスの武器は手投げナイフである。そして、ソフィの武器は拳銃である。クリスは主に接近戦が得意なので、接近・中距離が攻撃できる手投げナイフを使っている。しかしこの手投げナイフ、ナイフといっても刃渡りが30センチぐらいある大きな短刀であり、投げるのにもかなりの力が要るものだった。
ソフィのほうは中距離・長距離が得意な拳銃であり大きさもデザートイーグルと同じくらいの大型銃である。しかも、その発射の振動は比にならず、鍛えていない人はその振動だけで気絶する事もあるのだ。
ソフィ「初弾!」
シュン・・・・!ドン!
金属が飛んでいく特流の音の後に乾いた火薬の音がする。
クリス「まあ。こんなけでくたばってくれるほど弱くは無いよね?」
ソフィ「次からは・・・・しとめます。」
ソマリア「最初のときとは全然違う・・・・迷いの無い目をしています・・・・」
シャキン!カチャ!
式神が同時に飛びついてきた!
ドッ!
クリス「私一人でなんとかしてみせる!」
キィィィン!!!
式神のツメはクリスのナイフに防がれる。
その隙を突くようにもう方ほうのナイフで腹を刺そうとする。
クルッ!タッタッ・・・・
式神は間一髪のところで空中返りをしてそれから二歩下がりクリスのナイフを避けた。
クリス「仕掛けるよ!」
シュッ!シュッ!
ナイフが地面と平行に二本飛んでいく
キィィン!キィィン!
しかし、式神のツメに跳ね返えされる。
クリス「ジャスト!」
クリスはそのナイフが跳ね返されるのと同時に式神の懐に入りナイフを突き立てる。ナイフが跳ね返されることなどクリスは予想していたのだ。
キィィィィン!
無情にもクリスの持っているナイフはまたツメに阻まれる。
ダッ!タンタン!
軽いステップでクリスは一気に間合いを広くする。
クリス「反応が予想以上に早い・・・・・」
しかし、クリスの顔には恐怖も焦りも無かった。ただ、あるのは希望に満ちた顔だった。
ドドドド!!
式神が今度は迫ってくる。つめを立てて一気に突っ込んでくる
キィィィン!
ツメとナイフがこすれあう、こうなったら腕力の勝負になる。
ギギギギ・・・・・
クリス「く・・・・力だけなら負ける!」
クリスはここから離れようとするがこのまま力を抜けば体にツメが刺さるのは確実だし、両手がふさがっているので思うように攻撃もできない。
クリス「く・・・・・・まだまだ!」
バシッ!
式神の横腹にけりを入れる。式神はびっくりしたようで一瞬力が弱くなる。
クリス「もらい!」
クリスは蹴った足を式神につけたままそれを軸にして式神の後ろに回る。そして、背中からナイフを投げて突き刺す。
クリス「アン!」
ドスッ!
見事ナイフは頭に刺さり、式神はその場に倒れこむ。
ソフィ「もう一体は私がやります!」
ソフィが3発威嚇射撃をする。
ドン !ドン !ドン!
式神は傾向移動してそれを難なく回避する。
ソフィ「く・・・・予想以上の回避能力・・・・」
ソフィの弾はことごとく回避されて、弾を撃ちつくしてしまう。
ダダダダ!
式神は弾がなくなったことを知ると、ソフィめがけて走ってきた。
ソフィ「しまっ・・・・・・」
キィン!
ソフィはとっさにもう一個の銃を出して式神のツメを受け止める。ツメは避けたがこんな近くで、ツメを銃でしのいでいるので攻撃ができない。
ソフィ「ちょっと頭にきました・・・・」
バッ!
ソフィは銃を捨ててその両手で式神の手首を持ち逆立ちをして空中に飛ぶ。
ソフィ「容赦はしませんよ!」
腕だけで式神の上を飛び、また反転して足を式神の頭に向ける。
ドコン!
高さ3メートルからの蹴りは見事頭に命中して式神は地面に頭をのめりこむ。ソフィはその反動を使いまた空中に上がる。
ソフィ「じ、エンド!」
ソフィは服の仲からさっきより小さい銃を取り出した。
ドウッ!ドウッ!ドウッ!・・・・・・
何十発かの銃弾を式神に打ち込む。ソフィが地面に降りるころには、式神は消えていた。
ソフィ「任務終了。」
ソマリア「はい、ご苦労様でした。ふたりとも強くなりましたね。」
クリス「気持ちが晴れましたから・・・・思い切って戦えました。」
ソフィ「うん、私も落ち着いて行動できました。」
ソマリア「実戦での訓練はだいぶ上達しました。あとはどれだけ、鬼海の霊力に対抗できる霊力を持てるか、ですね。」
クリス「がんばります。」
ソフィ「はい、私も負けないようにがんばります。」
ソマリア「はい、今日の修行はここまでです。ゆっくり体を休めてくださいね。」
クリス「はい、ありがとうございます。」
ソフィ「お疲れ様でした。」
2人は教会を後にする。
ソマリア「お2人の霊力、戦闘技術の上達には驚かされますね。あの子達ならば、いまの悪しき循環を絶つことができるかもしれませんね・・・・もう、あの出来事は続けてはいけません・・・・・彼女たちがただ傷つくだけです。」
ソマリアはそうつぶやくと、後ろにある十字架に祈りをささげる。
ソマリア「神の化身のご無事が保たれますように・・・・・」
クリス「エミカさん、ご飯はいつごろ出来るかな?」
エミカ「ん〜あと30分ぐらいかかりますね。その間お風呂にでも入ってくださいな。」
クリス「うん、お先に入りますね。」
ソフィ「ねえ、お姉ちゃん。たまには私と入らないですか?」
クリス「いいよ〜」
2人はお風呂場に向かった。
クリス「どうしたの急に?」
ザバァ・・・・・・
ソフィ「ちょっと・・・聞きたい事がありまして・・・・・」
ザパァ・・・・・・
お湯が勢いよく流れいく。
ソフィ「・・・・・人を好きになるってことは・・・・・どんな気持ちなんですか?」
クリス「え?」
ソフィは持っているタオルの端をキュッと握る。ソフィは隠すためにタオルを持ってきているが、クリスは持ってきていない。
クリス「そうだなぁ・・・・・好きな人のことを考えると楽しい気持ちになる、かな?」
ソフィ「ふぅん・・・・じゃあ、お姉ちゃんは冬さんのことを考えると楽しいのですか?」
クリス「え?・・・・・いや、全然感じないね。だって、ふ〜くん、顔はいまいちだし、背は低いし、体格も品疎だし・・・・・でも、一緒に話していると落ち着くんだよね。ふ〜くんが天然だから、て言うものあるかもしれないけど、ちゃんとした考えは持っているし、的確な答えを出してくれたし・・・・・」
ソフィ「かなり難しいですね・・・・」
クリス「でも、私だって未だにふ〜くんのことは好きなのか分からないし・・・周りがそう言うから『あ、私はふ〜くんが気になっているのかな』って考えたりはするよ。」
ソフィ「お姉ちゃんも良く分からないのですね・・・」
ザパァ・・・・・
クリス「だから、案外好きになったりしても普段と変わらないかもしれないね。特に私たちのような禁欲をしている人たちにとってはね。」
ジャァァァア・・
シャワーからお湯を出してクリスは髪の毛を洗い始めた。ソフィはクリスの体をみる。
どこか自分より大きいような胸。
少しだけ筋肉がついている腕。
少しだけ割れている腹筋。
はりのある太もも。
キュとしまった手首。
シャワーからのお湯が胸、おなか、太ももと伝って排水溝に流れていく。
どこを見てもクリスは冬を好きになってから変わった気がする。でも、気がするだけなのだ。自分と変わらないような気がするし、なにか違う気がする。ソフィも冬さんは好きだ。でもそれは友だちとしてだ。でも、クリスと一緒に居る冬を見るとなぜかさびしくなる。胸がキュっと痛くなる感じがする。あくまでも感じだから本当にそう思っているのかが分からない。
私は、冬さんをどう思っているのだろうか・・・・・・
クリス「ソフィ?背中流してあげるよ?」
ハッと我に返り、クリスが喋っている事に気づく。
ソフィ「うん、お願いします。」
このときだけ、ソフィはクリスが冬との仲を誤解された気持ちが分かった気がした。
しゃこしゃこしゃこ・・・・・
クリス「見ないうちに大きくなったね〜」
ソフィ「え?」
クリス「背中だよ。肩幅が広くなって大人になった気するよ。」
ソフィ「そうですか?私もお姉ちゃんは・・・その・・・大人の体つきになった気がしますよ・・・・」
クリス「え〜そう?って言うか、私たち双子だよね〜」
ソフィ「同じ風に大きくなっていくのは当たり前ですね〜」
クリス「私たちも大人になっていくんだよね〜」
ソフィ「そうですね〜・・・・なんか、気持ちだけは子供と全然変わっていませんね。」
クリス「だね〜」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
私の好きなひと・・・・・・
誰なのだろう・・・・・・・
居ないかも知れないし、居るのかもしれない、
でも、私には分からない。
冬さんが気になっているかもしれないし、もしくは悠さんが気になっているのかもしれない、いやもっと別の人かもしれない・・・
でも、なんだか気持ちがざわざわして気持ち悪い。
いや、気持ち悪いというか、自分のはっきりしない心が気持ち悪いのかもしれない・・・・
それは、自分の決める事。
決して他人に決めてもらう事じゃない。