新たな夜明け


○  第三話:三日月「新たな動き」


ピキッ!
琴璃の飲んでいた湯飲みにひとりでにひびが入る。虫の知らせのようなものを感じる。
琴璃「え・・・・やだ・・・なに?」
そのお茶は決して熱いことも無く、どっちかというとぬるいくらいのお茶が入っていた。
決して温度差で割れるような熱いお茶は入ってはいない。
音葉「ん?どうしたの?」
隣でみかんを食べていた音葉も琴璃の様子に気づく。
琴璃「勝手にひびが・・・・・」
深くひびの入った湯飲みを音葉に渡す。ひびは中まで到達しているようで、少しずつお茶
がもれてくる。
音葉「・・・・・・大丈夫だよ。」
根拠は無いが、そう答えるしかなかった。
夏樹「音葉、琴璃。みかん食べていい?」
今までテレビを見ていた夏樹がこちらにやって来てコタツの中に入る。
音葉「どうぞ〜」
音葉はみかんの入っている浅いバスケットを夏樹のほうに寄せる。
琴璃「あの・・・・夏樹様・・・・」
夏樹「ん?」
丁寧にみかんの皮をむきながら琴璃の方を向く。
琴璃「何か不安な事を感じませんか?」
夏樹「ん・・・・なんで?」
夏樹は首をかしげる。それもそうだ、いきなり不安を感じないかといわれても何を不安と
感じているのかが分からない。
琴璃「いえ・・・・なんでもないです。」
琴璃は話すのをやめてしまう、この中で一番霊感の強いのは夏樹なのだ。何か変化があれ
ば真っ先に夏樹が感じているだろう。
夏樹「ん・・・・学校の方に強い霊を感じたけど・・・さっき無くなった。」
何かを思い出したかのようにボソッっと喋った。いつも口数が少ないので、音葉たちには
新鮮に感じる。
音葉「学校の方って・・・・クリスたちのが行った所だよね?」
琴璃「うん・・・・でも、倒したみたいだよ。」
夏樹「ん。今は問題ないけど、これから問題が起きる。」
夏樹は確信したようにまたつぶやいた。それは2人を不安にする。
京子「な〜に辛気臭くなっているのですか?」
お風呂から上がってきた京子が髪の毛を拭きながらコタツに入る。
音葉「いや・・・夏樹様がこれから何か起きると言っているのですよ・・・・」
琴璃「この湯飲みもひびが入ってしまっていますし・・・・・・」
京子「ふぅん・・・・・・・それで、落ち込んでいたのですね〜」
夏樹「元気ない。」
音葉「最近の霊は強くなってきていて・・・・・私たちで対処できるのでしょうか・・・?」
京子「自分の力が信用できないなら信用できるぐらいに鍛えればいいのですよ。霊力の   
源は精神力なんですから、鍛えればどこまでも上がるでしょ?」
そう、霊力は精神の強さが決める。精神が強いと霊力は強くそして、長く出し続ける事ができ
るのだ。
京子「私たち霊や神様は自分で霊力をあげることができないの、だから急に強くなったりはで
きないはずです。」
そう、人間と違って霊は霊力そのものが自分なので上げる事はできない。時間の経過によって
少しずつ上げる事はできるが、急に強くなったりはできない。
京子「だから、もうちょっと楽にしていいと思うの、確かに、最近の霊たちは力を強めている
けど、勝てない相手ではないでしょ?親玉が出てくるのは当分後なんだからそれまでに似合っ
た力をつけていけばいいのですよ。何も急がなくても、ゆっくりやってきましょう。」
音葉「・・・・・・・・・・・・・・」
琴璃「・・・・・・・・・・・・・・」
今までの2人は霊に勝てることが当たり前だった。しかし、今は違う。もしかしたら勝てない
相手が出てくるかもしれない。そのために焦りが出てしまったのだ。あせりは正確な判断をな
くすし、霊力も上がりにくくなってしまう。
音葉「だよね・・・・・・」
琴璃「ゆっくりやればいいのですよね。」
2人も京子の言葉に気づかされたのか、さっきまでの不安はなくなっていた。
京子「そうそう、そうです。」
夏樹「なつきも手伝うから、がんばろう。」
こうして4人は新たに自分のやる事を確認したのだ。




―翌日−「2005年11月15日(火)」
トントントントン・・・・・・・
台所から包丁で刻む音が聞こえる。琴璃はその音で目を覚ます。
琴璃「ん・・・・・5時・・・・・もうそろそろ起きないと・・・・」
布団から出て、クローゼットにかかっている巫女服に着替える。昨日と同じ、滝に打たれるた
めだった。
琴璃「お姉ちゃん・・・起きて・・・・・あれ?」
いつも寝ているはずの音葉が自分の部屋におらず、しかも布団がもうしまってあった。
音葉「・・・・巫女服もないし・・・・・まさか・・・・」
まあ、巫女服を使うといえばあれしかなかったが、めんどくさがりの音葉がいままで一回も自分
で滝に打たれに行った事が無いのだ。いつも琴璃に引っ張られてしぶしぶ行くのだ。
京子「あ〜音葉さんならもう滝に打たれていましたよ。」
琴璃「そうですか・・・珍しいなお姉ちゃんがすすんで滝に打たれるなんて・・・・」
京子「音葉さんなりの恐怖に勝つ方法なんですよ。きっと。」
そういうと、まな板に向かってねぎを切り始める。
琴璃「じゃあ、私も向かいますね。」
京子「がんばって〜」



音葉「あ、起きた?」
琴璃「びっくりしましたよ・・・先に起きているなんて・・・・」
音葉「ごめんごめん・・・・今後、霊に勝てる自信が欲しいからね、ちょっと背伸びしちゃった。」
琴璃「今度は私も起こしてくださいね。」
ザバァァァァ・・・・
琴璃も滝の中に入る。今日も冷たい。
琴璃「はぅ・・・・・・・・・ん・・・・・・」
いつ当たりに行っても地下水は0度で保たれている。冬は特に冷たく感じる。
音葉「ねえ、考えたんだけどさ。」
琴璃「え?」
滝に打たれながら会話をする。音葉は平気だが、琴璃は聞くだけで精一杯のようだ。
音葉「私たちって、我流で今まで戦ってきたでしょ。」
琴璃「うん。」
音葉「戦う技術を身につけるために京子さんにお手合わせしてもらわない?」
琴璃「そうだね。京子さんもかつては戦っていたそうですからね。」
いまでさえ、家事の仕事しかしていないが、2人の母親がまだ2人をおなかにいたとき京子は2
人の父親と一緒に戦っていたらしいのだ。しかも、その強さは半端でなくて正確な状況判断で数
多くの悪霊を一人で退治したと聞いていた。
琴璃「でも、その京子さんって何で戦わなくなったんだろう・・・・」
音葉「それなんだよね〜とても強いと思うのになんで夜戦ってくれないのだろ
   う・・・」
夏樹「京子は戦っちゃダメ。」
いつの間にか夏樹が滝の前に立っていた。
琴璃「あ、夏樹様・・・・おはようございます。」
音葉「何でダメなんですか?」
夏樹「京子の耳。あれ以上本性出すともどれなくなる。」
そういって、夏樹も自分の狐耳をぴくぴくさせる。
琴璃「そういえば、アルバムみると京子さんって耳の無い写真もあります・・・・」
夏樹「ん。ずーっとまえ、京子はここの親玉だった。私より強かった。」
夏樹「だから、昔の人間は一度この土地を捨てた。それぐらい危険。だから、京子を戦
   わせないで。」
夏樹の目にきらりと光るものがあった。そして、一滴二滴は地面に落ちていた。
音葉「そうだったのですか・・・・・」
琴璃「夏樹様、安心してください。必ず私たちの力で親玉を成仏させますから。」
夏樹「うん。ありがと。そのために伝えたい事がある。こっちに来て。」
音葉「なんですか?」
神様の命令なので従わなくてはいけない。二人は滝に打たれるのを中断して夏樹についていった。
音葉「あの・・・・・ここって、夏樹様しか入っていけないのでは・・・・・」
そこは、両親が生きていたころに「ここは、夏樹様しか入ってはいけない部屋だからお前たちは決して
入ってはいけないよ」といわれた本殿の奥にある四方を檜の木で作られた部屋だった。
夏樹「ここは、神楽家に伝わる精神の部屋。・・・・修行の間。」
襖のおくには幽霊が一人立っていた。
琴璃「あの方は・・・・・・」
音葉「京子さん?」
来ていた服は違うが、顔や容姿は京子そっくりだった。
夏樹「ううん。なつきの守護神。紺(コン)。」
紺「夏樹様、とうとう私が必要なときが来たのですね・・・・・」
その紺は2人と同じ巫女服を着ていた。
夏樹「ん。鬼海(キカイ)が目覚めかけている。音葉と琴璃に力をわけて。」
音葉「キカイ?」
琴璃「力をわける?」
いきなりの出来事なので2人とも戸惑ってしまう。
紺「まず・・・その話からしていきましょう。長い話になるのでどうぞ座ってくださ
   い。」
そういって、座布団をさしだす。
紺「まず、私の紹介からしましょう。私は紺、京子の対になるものです。」
琴璃「つい?」
紺「そう、京子が陰の霊とすれば、私が陽の霊になります。1000年前に私たちは生
  まれました。しかし、私という霊体を形作る上で二つに分離してしまったのす。」
音葉「ということは・・・・京子さんとは双子なんですか?」
紺「まあ、大まかに言うとそういうことにもなるけど・・・ちょっと違うの、京子は私
  から陰気だけが分離してできたようなものですから・・・・だから京子は悪霊にな
  ってしまって・・・そして、京子の討伐に当たったのがあなたたち神楽家の一族だ
  ったの。」
音葉「あれ?それではお父さんから聞いた話と違いますが・・・・・・」
琴璃「はい、京子さんは自然と悪霊では無くなったと・・・・」
紺「それは、私を隠すための嘘です。自然にではなくて、契約によって悪霊ではなくな
  ったのですよ。」
紺「私も、自分の分身が人や動物に危害を加えているのは見ていられなかった・・・だ
  から神楽家に協力したのが私たちが神楽家と共に生きていく事になったはじまりだ
  ったのです。」
紺「そうして、なんとか京子を追い詰めて神楽家は京子を使い魔として契約を結びまし
  た。そして、二度とこんなことが起きないように尾張大国霊神社をたてて、新しい
  神様を祭ることになりました。」
音葉「それが、夏樹様なんですね。」
紺「そう、そして私は自分から夏樹様の守り神になることにしたのです。京子の反省も
  込めて・・・・」
琴璃「しかし、なぜ、紺さんを隠しておく必要があったのですか?」
紺「私や京子は神様になれるぐらいの霊力を持っています。それを悪霊に悪用されない
  ためと、新世代に間違った使い方をさせないためです。」
音葉「間違った使い道?」
紺「はい、私は早く、そして簡単に強く強大な力をあげることができます。しかし、こ
  の力は仮初の力・・・・諸刃の剣なんです。苦労を知らずに得た力は自分の精神を
  蝕み、やがて理性をなくしていきます。」
琴璃「つまり・・・力におぼれて自分を忘れるという事ですか?」
紺「ええ、そういうことになります。しかも、私とこうして話している間でもあなたの
  霊力は上がっていると思います。それだけ、強い霊力なんです。」
2人はいつに無く力がみなぎる感じを受けていた。
夏樹「この剣を持ってみて・・・・」
そういって2人に見た事の無い日本刀を渡す。それは黒い紫色をしていて不気味なものだった。
音葉「なんですかこれは・・・・」
紺「これは、いままでお二人が使っていた武器よりはるかに霊力の影響を受けやすい素
  材でできている刀「杜若(カキツバタ)」です。今は黒い色をしていますが、2人
  の霊力が上がるとだんだん白く輝いていきます。」
琴璃「上がるって、どのくらいあげるのですか?」
紺「鬼海がめざめるのは大体10〜15日後になると思いますから・・・・その間まで
  に、10倍まで引き上げます。」
音葉「10倍ですか!」
これまで一生で上げた分を超えて10倍にあげるのだ。今までの修行方法では到底できない。
琴璃「そんな事できるのですか?」
紺「はい、これからは滝に打たれなくてもいいですから、この部屋に来てください。そ
  して学校が終わって時間があればお手合わせもします。」
夏樹「このぐらいに光ってもらわないと鬼海には勝てない。」
そういって、音葉の杜若を持つ。すると、刀はまばゆく光り始めた。しろい強烈な明かりだった。
琴璃「まぶしい・・・・・」
音葉「それで・・・・鬼海ってなんなんですか?」
夏樹「京子や紺と一緒の存在。神になれなかった霊。」
補足を加えるように紺が喋りだす。
紺「鬼海というのはかつての私たちみたいな強力な霊力をうまく扱う事ができずに理性
  が無くなり、破壊活動という本能だけになってしまった神様のことです。しかし、
  いきなり鬼海になるのではなくて、潜伏期というのがあるのです。そのころの鬼海
  は力を蓄えていて、その場から動く事も体を動かす事もできません。ですが、その
  かわり何十もの霊気の糸による繭で自分を守っているため攻撃する事もでき
  ません。」
音葉「だから、その間に力をつけておくのですね。」
琴璃「・・・・できるのでしょうか・・・」
紺「力を手に入れるだけなら簡単です。しかし、それを上手に扱わなくてはいけませ
   ん。だいたい5日ぐらいで霊力は上がります。その後が大変ですけど。」
京子「あ、ここにいたのですか〜探しましたよ〜」
夏樹の後ろからピョコっと現れる。
紺「ああ、ごめんなさい。もうそろそろ教えてもいい時期かなって思いまして・・・」
同じ顔が二つ並ぶ。顔だけならまだしも、髪型もしぐさも一緒だった。
夏樹「ん。」
京子「・・・・やっばり、復活するのですか・・・・」
紺「そうみたいです。でも、この子達なら大丈夫ですよ。」
なぜか、京子はポンッと手を叩いた。
京子「これで紺も一緒にご飯食べれますね。」
紺「はぃ?」
突然飛んだ話をするので紺も思考が止まる。
京子「だって、紺いつも一人でいたじゃないですか・・・・・さびしく無かったですか?」
紺「いや・・・・さびしいとか・・・・そういうのは・・・・・」
京子「どうなんですか?」
紺の声を静止させてズズイッっと京子が紺に近づく。
紺「さびし・・・・・かったです・・・・」
紺は顔を赤めながらつぶやいた。
京子「うんうん、じゃあ、朝ごはんにしましょう。丁度ご飯も炊き上がりましたか
   ら。」
音葉「あっ!もうこんな時間!・・・・」
琴璃「わっ・・・・・もう6時ですか・・・・朝から時間が早く感じますね・・・・」
京子「さあさあ、皆母屋に行くよ〜」
紺「ちょ・・・・京子!まってください!私はいいですから!・・・・・・」
なぜか紺はここにとどまろうする。もう2人にばれてしまったので隠れる必要性は無い。
夏樹「京子がこう言ったら止まらないよ。」
紺「そんなぁ・・・・夏樹様・・・なんとかしてくださいよっ!」
まあ、紺も一人の食事はさびしいと感じていたので心の隅のほうでうれしさもあったのだが。




紺「ふう、ここで食べるのは300年ぶりかなぁ・・・・・」
音葉「そんなにあそこにこもっていたのですか?!」
紺「いあ、音葉さんと琴璃さんがいないときは散歩とか京子の手伝いとしていましたか
  ら、あそこにずっといたわけではないですよ。」
京子「たしか、音葉さんと、琴璃さんに初めて会ったのは生まれてすぐだけでしたっ
    け?」
紺「そうですね。2人と面識あってみたのはあの時しかないですね。」
琴璃「・・・・覚えてませんよそんなころの事は〜。」
音葉「でも、京子さんと紺さんってなかがいいんですね。対になるものっていってたか
   らてっきりお互い嫌っているのかと。」
紺「私から言うと、京子の変わり方のほうが不思議なくらいですよ。」
夏樹「紺以上に明るくなった。」
音葉「それもそうですね〜」
琴璃「紺さんはやはりお父さんやお母さんにも霊圧をあげたのですか?」
紺「いえ、霊圧はあげてませんけど戦い方の基本を教えましたよ。でも、戦い方は我流
  でしたね」
音葉「戦い方とは?」
紺「簡単に言うと武術稽古ですね。弓、剣、銃火器などどんなところで使えば一番効率
  よく戦えるかとかを教えました。」
音葉「私たちも我流ですから・・・・・紺さんにいろいろ教えてもらわないと・・・」
琴璃「だね。さすがにもう我流では戦いにくくなってきましたし・・・」
紺「じゃあ、ちょっとだけやりますか?」
音葉「はい。」
そうして、3人は神社の前に出た。外は太陽が昇って明るくなっていた。車もちらほら走
りかけている。
紺「用意は良いですか?」
音葉「はいっ!」
琴璃「はい。」
2人は竹刀をギュッと構える。
紺「・・・・・・・・・・」
紺が瞑想し始めると回りに小さな竜巻が起こり辺りはざわめく。そして2人にはつよい霊気
がのしかかる。
音葉「・・・・・すごい・・・・」
琴璃「さすがです・・・・こんなに強いとは・・・・」
バチッ!バチッ!
紺の霊気のせいで飛んでいる葉っぱがちぎれてしまった。それだけ強い霊気が出ているのだ
。完全に霊気
の差では負けている。
音葉「攻めるにしても・・・・・・」
怖い。
怖い。
・・・・
ニゲロ!逃げろ!
・・・・
体z中が痙攣しているように思うように動かない。
その一言だけが頭によぎりなかなか一撃を出す事ができない。音葉と琴璃は竹刀を構えた
まま一歩も動けない。
紺「どうしました?そっちからこないのでしたら私から行きますよ。」
落ちていた葉っぱを拾い、それに霊気をこめる。すると葉っぱは霊気の玉になりそれを2
人にめがけて投げつける。
ドォォォォン!
2人はとっさにかわし霊気の弾は二人の後ろにあった楠木に当たる。すると楠木には大き
なえぐれた後が着く。
京子「やってますねぇ・・・」
夏樹「音葉、琴璃。がんばれ。」
横の縁側では2人が観戦している。
音葉「琴璃!仕掛けるよ!」
音葉は紺の投げた後の隙をつき、竹刀を紺に叩き込む。
琴璃「うん!」
2人とも一斉に突っ込んできた。しかし、分かりすぎる攻撃に紺は難なくかわす。
紺「2人とも、せっかく2人もいるのに同じ行動してたら意味ないですよ。連携をとっ
  て攻撃しないと、力は半減しますよ。」
そういいながらまた霊気の弾をつくる。
音葉「くっ・・・・」
琴璃「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」
あまりにも強い霊気のせいで2人の精神力はすぐになくなってしまった。紺の霊力を耐え
るので精一杯なのだ。
紺「落ち着いて・・・・狙いを定めさせない方法を考えるのです。」
音葉「琴璃・・・・・大丈夫?」
琴璃「う・・・・ん・・・・」
そうは言うものの、二人ともあと一撃与えるのが精一杯だった。
紺「がんばってください!これは追跡型ですよ!」
ヒュュ・・・・・・・・・
霊気の弾が打ち込まれる。
音葉「琴璃、回って!」
琴璃「うん!」
音葉は霊気のたまに突っ込み、琴璃は紺の後ろ見回りこむ。
音葉「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
音葉は自分の霊気をすべて竹刀に集めて霊気の球に竹刀で殴りかかる。
バキャア!
無残にも音葉の木刀は粉々になってしまった。
かまわず琴璃は、紺の後ろに回った琴璃は背後から竹刀を振りかざす。
バシッ!
次の瞬間、無情にも琴璃の振り下ろした竹刀は紺の片手に止められる。
紺「後ろ見回ったのは良いですが・・・・私の霊気を切るより私を叩いたほうがよかっ
  たですね。」
琴璃「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・わたし・・・・たちのかちですね・・・・」
音葉「だれも、竹刀で殴ると言ってません!」
完全に油断をしていた紺の後ろから音葉が飛び込んできた。
ドス!
音葉が紺のおなかに肘を入れる。琴璃は囮だったのだ。
紺「しまった・・・・・ふっ・・・・やっぱり今まで戦っただけありますね・・・・」
京子「おお〜〜紺に勝ったよぉ!」
夏樹「ん。」
観戦していた2人も拍手を送る。
音葉「あれ?肘うち効いてないの?」
紺「だって、霊力が全然無い攻撃ですから・・・・・当たっても痛くないですよ。」
じつは霊気の弾をきったときにすべての霊力を使ってしまって肘うちにまわす霊力が無かったのだ
琴璃「はぁ・・・・・はぁ・・・・・つかれた・・・・」
音葉「すごい、霊力ですね・・・・・・・・」
紺「だって、神の使いですから。でも、夏樹様が怒るとこんなものではすみませんよ
   〜」
京子「おつかれさま〜。どう紺は?」
琴璃「つよいです・・・・・」
夏樹「音葉も琴璃も強くなっているよ。」
紺「うん、このぐらいなら私が少し手を差し伸べるだけでどんどん進んでいきますよ。
  一緒にがんばりましょうね〜」
音葉「ふぁい。」
腑抜けた声が神社にこだました。




−深夜14時−
音葉「暗い・・・・・」
琴璃「電灯が無いですね。」
紺「がんばってください。」
3人は稲沢駅の裏の空き地に来ていた。かつてJRが国鉄だったころ、日本最大の貨物
専用の線路が並んでいたところだった。数にして10〜15本は並んでいて踏み切りの
遮断機から遮断機の間が100mはあったのだ。しかし、車の復旧や民営化の影響でか
つて10数本あった線路は空き地に化してしまった。
しかも、最近までJRが管理していたのであたり一面は何も無いのだ。あるといえば最
近できた新しい道路ぐらいだろうか。
琴璃「でも、紺さんが来てくれるなんて心強いです。」
音葉「そうだね。」
紺「でも、私は戦いませんよ。どう戦うか手助けするだけですから。」
それでも、2人にとっては心強い。圧倒的な強さのいる仲間がいれば誰だって心も軽くなる。
紺「さき・・・40メートル先にいますよ。」
音葉「はいっ。」
琴璃「戦闘準備に入ります。」
紺「悪霊もこっちに気づいたようです。気をつけて。」
じりじりと気持ちの悪い霊気を肌で感じる。悪霊独特の感じだった。
???「オマエタチナニシニココヘヤッテキタ」
紺「あなたの邪気を取り払いに来ました。」
???「ジャキダト!?ワレヲホロボシニキタノカ・・・・・」
音葉「人間を傷つけておいてそのセリフはないでしょ?」
琴璃「あなたは過去に3人もの死人を出させている事は分かっています。」
???「憎い、悪い(にくい)難い(にくい)・・・・・人間など欲望の塊に過ぎな
    い・・・・我が浄化しているのだ、邪魔はさせんぞ!!」
ドスッ・・・・・ドスッ・・・・・
重い足音がする。80Kgや100Kgぐらいではない、200Kgから300Kgぐらいはありそうなずっしりとした足音だった。
紺「話による和解は無いですか・・・・・音葉さん琴璃さん・・・・がんばってくださ
  い」
パシッ!
二人の近くの草の葉がはじける。なんと、一日で浸りの霊力は2倍になっていたのだ。前は目に見えた変化は無かったのだが、今では空気は渦を巻き、葉を破裂させるまで霊力が上がっているのだ。
音葉「すごい・・・・本当にここまで上がるなんて・・・・」
琴璃「自分の霊力じゃ無いような感じがしますね。」
紺「思いっきり暴れてください!」
???「何だこの霊気は・・・・・・うぁぁっぁぁぁっぁ!」
驚いたショックでその霊は姿を現す。どうやら、人型の霊のようだ。しかし、体長が3
メートルはゆうにある。
音葉「琴璃おびえてないよね?」
琴璃「無論!これから任務を開始します。」
そういって、琴璃は弓矢を握る。
音葉「じゃ〜いくよ〜」
大男「クソウ・・・・ワガカテトナレ・・・・」
かなり弱気の霊だ。圧倒的に霊力の差を見せ付けられたので、おびえてしまっている。
音葉「それっ!」
ドズ!
音葉は肘打ちを大男に与える。紺と戦ったときとは違い、霊力もたくさんあるのでダメ
ージも相当あった。
大男「ウグググ・・・・・コノラロウ・・・」
ブン!
丸太のような腕を音葉めがけて振り落とす。
ザシュ!!!
音葉の頭に当たろうとした瞬間、大男の腕がきれいに吹っ飛ぶ。
琴璃「お姉ちゃんだけが戦ってるんではないのですよ?」
ちょっと琴璃の声が裏返っている。矢を腕に当てて止めるだけだったのだが、腕まで吹
き飛ばしてしまうとは思ってもいなかったのだ。
音葉「サンキュ!」
ゴスッ!!
音葉は脳天に鉄拳を与えて大男をノックダウンさせる。
すると大男は薄くなっていき、消えていった。
音葉「おそろし〜・・・」
琴璃「これは・・・・・危険な力ですね・・・・・」
紺「だから、私は居間まであなたの前に出なかったのですよ。」
物の数分でけりがついてしまった。今までならだいぶ苦戦していた相手だったのが嘘のようだ。
紺「力時として強い信頼を生みますが、それも諸刃の剣、使い方を間違えれば自分を不
  幸に導く事を忘れないでください。」
音葉「はい。」
紺「そして、この力を決して過信せずに日々鍛錬を続けてください。そうすれば、自分
  自身の強さもつけられるはずです。」
琴璃「自分自身の強さ・・・・・・」
紺「まあ、それはゆっくりつけていきましょう。もう、遅いですから早く戻って寝まし
  ょう。」
こうして3人は家へ戻っていった。
紺(大丈夫・・・・・・この子達ならば・・・・・・)