「腐食した鎖」


・第15話:「腐食した鎖」



京子「きれいな月夜ですね・・・・・」
京子は一人で縁側に座っていた。時間は午前の3時半。あたりは静まり返り車の音さえもしない。外は雪でとても寒い。そして悪霊退治に行った音葉たちはもう眠っている。雲の間から顔を出す月がなんとも神秘的に見える。
冬「・・・・起きていたのですか?」
横から冬が現れる。あの血のついたコートまだ着ている。
京子「こんばんは。もう、起きていていいのですか?」
冬「いや・・・まだふらふらですよ・・・」
そういって肩のポケットから白い筒を出してそれを口に挟む。
京子「お疲れ様です・・・・・・」
冬「ありがとう・・・・・」
冬はふぅ、と息を吐く。一瞬白くなりまた消える。
京子「明後日・・・・ですか?」
明後日といえば、鬼海と戦う日のことである。
冬「はい・・・・そうですね。」
筒を口に入れながら喋る。
京子「・・・・・・・また、消えるのですか?」
冬「うん・・・・多分消えますね・・・・・でも・・・」
冬は月に向かって息を吐く。
京子「でも・・・・・・」
冬「僕の予知夢だと、あの誰かが死んでいるはずなのです。誰かを犠牲にして倒すはずなのですが・・・・・」
京子「皆さん生き残ってますね・・・・」
冬「そして、僕の腕を代わりに失った・・・・未来が変わっているのです・・・」
京子「そうですか・・・・・」
冬「もしかしたら・・・・・・もしかするとです・・・・」
京子「・・・・・・・そうですか・・・・・」
何かにうなずくように京子は答えた。
冬「早く吸って記憶を消さないと・・・・」
京子「あの・・・・・・」
京子が冬の話をさえぎる。
京子「記憶を帰すのは明日の早朝にしませんか?今は冬さんも体力が無いですし・・・なにより、そんなに急がなくても良いのではないですか?」
冬「・・・・・・それもそうですね。」
京子「急がなくてもいいですよ・・・・・」
記憶を消す事はかなりの多くの霊力がいるのだ。しかし冬にはその霊力がなくて記憶を消しし終わると昏睡状態になるのは分かりきっていた。
京子「冬さんは何でこの時間にこんなところにいるのですか?」
冬「雪が見たかったから・・・・・」
冬も何でこんなところにいるのかは理由が無い。たまたま起きて、たまたま外に出たら京子がいた・・・・から、こうやって外を見ているのだ。
京子「雪を見に・・・ですか・・・・私は雪を見ると悲しくなりますね。」
京子「雪はこうやって音もなく降ってきます。そして、知らない間に積もりますが、太陽が出れば瞬く間に無くなってしまいます。こんなにはっきりした存在なのに消えていってしまう存在なのです。少しの影響で形を変えてしまったり。なくなってしまったり・・・・・」
冬「・・・・・・・・・・・」
まるで冬のような存在だ。
冬存在は決してばれてはいけない。友達とも遊ばなくてはいけない。先生の話を聞かなくてはいけない。でも、正体が分かれば消えて存在を消さないといけない。
なんて悲しい人生、存在なんだろう・・・・・
京子「運命は自分で作る物。でも、それは一本しかない。完全に始発から終点までひられたレールを安定して走れるか・・・・・それだけなんですよね。未来は決まってはいないが、一本しかない。だから、過去は一回しかない・・・・・」
冬「・・・・・・・・」
だまって、冬はうなずく。自分の未来ももう分かっている。
何回も夢の中に出てきた。これ未来で間違いないだろう。
でも未来は自分で作る物なのに、決まった未来は無いのではないだろうか?
確かに過去は一つしかないし未来も一つしかない。でも、選択肢によっては隣のレールに走る事が出来るはずだ。結果としては一緒でもその間の事は変えられるのではないだろうか?
京子「でも、あなたは生物の理念を覆して生まれてきた存在。本当なら未来も過去も無い存在です・・・・・だとしたら、いくらでも変えれるのではないでしょうか?」
そう、冬は生物のなし得なかった永遠の命を不完全ながら手に入れているのだ。だから、今こうして生きている冬は存在してはいけないし、存在できるはずが無い。だから、今までの生物の理論からかずれるのではないか、と言うのだ。
冬「そうかもしれません。私自体生まれてきてはいけない存在。未来を変えているのですからね・・・・・それならばまた未来を変える事が出来のかもしれません。」
現に、もう未来は変わってしまった。誰も死なずにこうやって帰ってこられたのだから・・・・
京子「あとは、冬さんが未来を変える意志があるか・・・・だと思います・・・・」
冬「はい・・・・・」
こぶしを月に立てて何かを誓う。
未来はもうすでに出来ているものではなく自分でこれから組み立てていく物と信じて・・・・
京子「今日はもう遅いです・・・・・ゆっくりお休みください。」
冬「うん、そうしますね。」
タタタタタ・・・・・
冬が部屋にはいっていった。




鬼海「ふふふ・・・・・・お前に取り付いた以上。この神の使いたちも攻撃できぬだろう・・・・」
冬「く・・・・・お前はどこまで卑怯なんだ!!」
鬼海の体が完全に冬にいるのが分かる。
鬼海「絶対的な力を得るため・・・・この世で最強の力を手に入れるまでは転生を続けていくぞ・・・・」
冬「そのためならほかのひとがぎせいになっても良いというのか!!」
冬の隣には音葉が死んでいる。
いや、まだ生きているかもしれないが、とても危険な状態にいることは確かだ。辺りには大量に血が飛んでいて服もボロボロに引き裂かれ防御としての役目を果たしていない。
鬼海「われは、憎む気持ちの固まりだぞ?情など持っておらん。」
冬「く・・・・・・」
正面ではクリスが泣いている。必死にこっちに来ようとしているが、ソフィが必死に止めている。
ソフィ「だめです!今行ってはお姉ちゃんも乗っ取られてしまいます!!」
クリス「でも!でも!ふ〜くんが!!・・・ふ〜くんは良いの!のっとられても!!」
冬「く・・・・・・・・今回も僕は無力なのか・・・・・・・」
転生して3回。このこと事を何回続けたのだろう。
冬は鬼海の乗っ取られて、一緒に戦ってきた仲間の一部は死んでしまう・・・・・
鬼海「まあ、今回も最強になれなかったが、次に望みを賭けるとするか・・・・・」
冬「させるか!!」
しかし、いまの冬たちの力ではどうにも勝てる要素が無い。
まともに戦えば絶対に全滅してしまう。
冬「・・・・・・・・」
冬は今までのことを考える。
学校の事・・・・・
家のこと・・・・・
自分に起こった今までの出来事。
最近起きた事なのに、どれもひどく懐かしく感じる。
ああ、自分の一生ってこんなものなのかな・・・・・
今にでも笑い出してしまいそうだった。
いくらあがいても決まった未来には抗えないという事なのか・・・・・

京子「でも、あなたは生物の理念を覆して生まれてきた存在。本当なら未来も過去も無い存在です・・・・・だとしたら、いくらでも変えれるのではないでしょうか?」
頭の中にこの言葉が浮かぶ。
・・・・・・・・・・・
未来を変える・・・・か・・・・・・
結局、自分も他の生物と一緒な時間に逆らえない物だったんだな・・・・・
夢と同じの戦況。
夢と同じ。
何もかもが。
一秒も狂いがない。
機械の様に正確だった。
夢と同じ事をしようとしたのだが、結果は変わらなかった。
ただ、分岐点の前後が少し動いただけ、結果は一緒。
僕が死んで鬼海を封印する。
そう、前も変わらなかった。
・・・・・・・
冬「・・・・・クリス・・・・ごめん・・・・・僕を殺せ。」
クリス「え・・・・・・・」
冬「・・・・・・それしか鬼海を止める方法はない。」
クリス「やだ・・・・・・」
冬「たのむ・・・・・殺してくれ・・・・・・」
クリス「やだ!・・・・・・・」
冬「クリス!」
クリス「なんで?なんで?ふ〜くんを殺さないといけないの?ふ〜くんは何もしてないないんだよ!」
そう、冬に罪はない。
冬「・・・・・・・ごめん・・・でも、こうしないと鬼海を倒せない。」
他の方法はない。
自分も死んで鬼海を倒す。
決定事項。
変わりはない。
クリス「・・・・・・・・・・・・」
クリスは黙って立ち上がる。
冬「・・・・・・・」
冬も黙ってそれを見届ける。
クリス「・・・・・・・・・」
カチャ・・・・・・
服の中から手投げナイフを一個取り出して構える。
冬「そう・・・・そうだ・・・・・・」
ソフィ「お姉ちゃん!!!」
ソフィもその行動をとめることが出来ない。止める事は世界を滅ぼす事になる。
こつ・・・・

こつ・・・・

皮製のブーツの音がする。
一歩一歩音が鳴ることに冬との距離が縮まる。
ドクン・・・・

ドクン・・・・

逆に、胸の鼓動は冬に近づくに連れて大きくなっていく。

冬「・・・・・・・・・」
クリス「こんなのヤダ・・・・・どうにかならないの?」
クリスが目の前に来たとき、口が開く。
冬「・・・・ごめん・・・・・・・」
クリス「謝らないで・・・・・・私嫌だ・・・・・こんな別れ方・・・・」
もう、クリスの目からは滝の様に涙がこぼれだしている。
冬「・・・・・・・」
冬は何も言わない。
冬「・・・・・」
クリス「・・・・・ん」
冬はクリスの唇を奪う。
冷たい唇だった。でも暖かさはある。
クリス「んん・・・・」
それに答えるように他を冬の後ろに回して唇を必要以上に求める。



それは長く続いた。
冬「・・・・・・まだ、愛しているよ。」
クリス「私も・・・・・・・・」
一回唇から離れてこう喋り、また唇をあわせる。
ドスッ!
と、同時にクリスが心臓にナイフを突き刺す。
冬「・・・・・」
クリス「・・・・・・・」
でも、キスをやめなかった。
ズル・・・・・・
冬が力尽きてその場に倒れこむ。
冬「・・・・・・・」
ドサッ!!
まるでスローモーションの様に倒れこんだ。
クリス「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
クリスの声だけが悲しくこだました。


ガバッ!!
冬「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・」
チチチ・・・・・チュンチュン・・・・・
どうやら、夢だったようだ。朝の日差しがまぶしい。
冬「ここ・・・・・どこだ?」
いつも寝ているベッドではなかった。いつもと違う部屋で、昨日あった事を思いだす。
冬「・・・・・・あ、音葉の家か・・・・・」
昨日、あの戦闘に出て行ったものはみんなこの家(神社)に連れてこられたのだ。そもそも、あのあと皆疲れ果ててしまい自力で家に帰る事が不可能になっていたのだ。
冬「・・・・・・なんか当たるなぁ・・・・・」
足の辺りに暖かくてやわらかい感触がする。
冬「・・・・・・・・・・」
まだ、寝ぼけていて状況がつかめない
ただ、冬の両サイドには音葉とクリスが寝ている。
2人とも寝相が悪いらしくて冬の寝ている布団と同じ布団に寝ている。つまりこの布団には3人一緒に寝ている事になる。
冬「・・・・・・・・・え?」
頭が働かない、低血圧のせいで朝の判断が鈍る。
音葉「すう・・・・すう・・・・」
クリス「・・・・・すう・・・・んん・・・・」
2人の寝息が冬に聞こえる。
冬「げ・・・・・・」
ようやく事の重大さに気づく。
冬「・・・・・・なんでこうなるのかな・・・・・」
2人とも体重を冬にかけている様で、冬が抜け出そうとしても2人が起きてしまう。
起こしても良いが、この状況をうまく説明できないのでどうにかして起こさないようにして出なくてはいけない。
冬「・・・・・・よっ・・・・」
フニュ・・・・・
指が何かをさわる。
冬「あ・・・・・・」
音葉の頬を触っていたようだ。すごく弾力のある感触が伝わる。
音葉「ん・・・・・・・」
そして、冬の手を何故か掴んでしまう。
冬「こら!僕が暴走しても知らんぞ!!」
小言で怒鳴る。当然2人は起きない。
冬「あ・・・・」
いつの間にかクリスも体にしがみついてきた。
クリスの後ろには抱き枕がある。どうやら、それも抱いて寝ていたらしいが寝相の悪さの為に冬を抱き枕と勘違いしたようだ。
冬「ばか!まだ収まってないんだぞ!」
股間の膨張を気にする。
京子が部屋に入ってきた。
京子「あ・・・冬さん・・・おきたので・・・・・・」
途中で京子の声が止まる。
冬「あの・・・・・」
京子「・・・・・・・」
冬「・・・・・・・・」
京子「あ、お邪魔なようですね・・・・・・」
くるりと向きを変えて戻ろうとする。
冬「待ってください!助けてくださいよ!!」
京子「あら、うれしかったのではないのですか?」
まあ、男としてうれしいがうれしいだけで事が進めば冬も苦労していない。
京子「・・・・・・ご一緒しましょうか?」
何故そう来るのだろうか?
冬「ここはコスプレキャバクラですか?」
音葉もクリスも戦闘の衣装のままで寝ているので修道着と巫女服で寝ている。
京子「冗談ですよ。でも、こう・・・つながっていますと・・・・」
冬「・・・・・・」
京子「まあ、業によっては業に従え。やって下さい。」
女の子が抱いている・・・・という事は男は・・・・という事である。
冬「・・・・・あの、僕の反応を見て遊んでいません?」
京子「もちろん。」
万遍の笑みを浮かべる。
冬「・・・・・・・・・」
驚くというか冬はあきれてしまう。
京子「ふふふ・・・・予想通りの反応をありがとうございます。」
冬「負けましたよ・・・・・」
京子「しかし、女の子6人の部屋で何も行動しなかったのはすごいですねぇ。」
よく考えたら、この神社には音葉・琴璃・京子・紺・夏樹・冬樹・クリス・ソフィ・命・翡翠と10人の女性に対して男は冬の一人だけである。ゲームや漫画の世界になっている。
冬「男はみんな狼ですか?」
京子「狼というかシャチ?ですか?」
冬「聞かないでください。」
京子「あ、そうだ・・・・」
すくっと立ち上がって
京子「みなさ〜んご飯ですよ〜」
と大声で言う。
冬「あ・・・・・・」
音葉「ん・・・・・・」
皆が一斉に起き出す。
冬「京子さん?!」
京子「ご飯ですから。」
そういうとすたすた戻っていってしまった。
クリス「・・・・おはよ・・・・・・」
冬「・・・・・・・・」
音葉「・・・・・おはよ・・・・・」
ソフィ「ん・・・・もう朝ですか・・・・・」
命「うう・・・まだ眠いですよ・・・・・」
琴璃「・・・・・・あれぇ・・・寝過ごしましたか・・・」
そして皆が起き出す。
冬「・・・・・・終わったな・・・・・」
音葉とクリスの顔が近い。
音葉「?」
クリス「?」
冬「や・・・やぁ・・・・」
気のない返事をする。
音葉「あ・・・・れ・・・・?」
クリス「あ・・・・・・」
琴璃「あれあれ・・・・」
ソフィ「あやあや・・・」
声にならない声を上げる。
冬「・・・・・・・・」
音葉「え?え?なんで私こんなところに!!」
クリス「ほぇぇぇぇぇぇ!!!」
冬「さあ!どうぞ!!」
ほっぺを差し出す。
音葉「・・・・・え?なに?」
クリス「なに?変な顔?」
冬が思ったようにビンタが飛ぶことはなかった。
冬「あれ?」
音葉「ごめんね、冬〜私寝像悪くて・・・・・」
クリス「え〜音葉もそうなんだ〜私も寝像悪いんだよ・・・何かを抱いてないところころ転がっちゃうんだよ〜」
冬「・・・・・・・」
翡翠「え?私に何かついてますか?」
冬は翡翠に弁解を求めたつもりだったが無駄に終わってしまった。
命「ん?なんですか冬さん。」
この子たちには冬が男という事を自覚していないのだろうか。
夏樹「ふ〜〜〜〜〜ゆ!!」
ボフッ!
夏樹が飛び込んできた。
冬「おう!夏樹様、おはようござます。」
夏樹「ん。おはよう。」
命「夏樹様。おはようございます〜」
翡翠「おはようございます〜」
夏樹「ん。」
なんだか、話が進んでいる。あまり自分から聞きたくなかったが冬は話を切り出すことにした。
冬「あの・・・僕は何もお咎め無いの?」
音葉「お咎め?」
冬「いや・・・・女の子の寝るところを見てるわけだし・・・・その、女の子としては・・・見せたくないのでは・・・・」
ソフィ「あ、そういえばそうですね・・・・」
なんと今まで感じていなかったようだ。
冬「へ?」
琴璃「冬さんなら何もしてこないだろうって思いますし・・・・なんか、冬さんって男の子って感じしないのですよねぇ・・・・」
冬「・・・・・股についている者見せようか?」
冬は冗談交じりに話すが、ショックは隠せない。
命「いえ、男女でいうと男の子って事は分かるのですが・・・・なんか、男友達とかそういうのとは違う感じがするのですよ。」
翡翠「そうです。感覚的には身内みたいなものですかね。」
冬「でも、こんなに女の子が寝ていたんだよ、もしかしたら・・・・ってことは感じなかったの?」
音葉「ううん、全然。」
冬「そうか・・・・じゃあ、違う男の子が寝てたら?」
琴璃「そっ・・・それはこまりますっ!」
ソフィ「恥かしいですよ!!」
なんか、急にモジモジし始めた。
冬「・・・・なんだ、この違い?」
命「やはり男の子は男の子ですから・・・・・」
翡翠「うん・・・・はずかしいですよ・・・・」
冬「・・・・とりあえず、服着替えるから出るね。」



―食卓―
音葉「あれ?今日って何曜日だっけ・・・・?」
京子「水曜日ですがなにか?」
琴璃「えと・・・・・今って9時ちょっとですよね・・・・・」
大事なものを忘れている気がする。

―学校―
悠「・・・・・・冬はどうしたんだ?休みか?」
ぽっかりと空席が明いている。一学期に皆勤賞をとった冬が無断欠席はありえないだろう。
しかもその皆勤賞組みの音葉、琴璃、クリス、ソフィまでもが休んでいる。
悠「まさか・・・・あいつらと一緒にいまごろ仲良くやっていたりして・・・・・」
そう考えるが、冬がそこまで女の子との付き合いが良い訳が無い。
悠「そんなことないか。」
と、一瞬で否定される。

―食卓―
冬「ひ〜くしょん!!」
京子「あら、冬さん風邪ですか?」
冬「いや・・・・ぼく埃アレルギーだから・・・・」
ズズッと鼻水をすすりながら答える。
音葉「なんか、私も寒気がしたのですが・・・・・」
命「昨日の疲れがたまっているのですよ。」
音葉「そうだよね〜。」
冬「あ!」
突然何か思い出したように声を上げる。
音葉「え?」
琴璃「はい?」
クリス「ん?」
ソフィ「はい??」
命「??」
翡翠「え?」
皆が冬に視線を送る。
冬「学校・・・・・行かないと・・・・・・」
一同「あ!」
ものの見事に忘れていた。
というか、今から行っても遅刻してしまうので皆勤賞は取れないが・・・・
冬「おおおお、皆勤賞が・・・・・・・」
実は何もとりえの無い冬は皆勤賞こそが唯一取れる賞状だったのだ。だから、ひそかに皆勤賞を狙っていたのだ。
音葉「え?皆勤賞狙ってたの?」
冬「僕が賞状を取れるのはこれくらいしかないんだよ〜」
急いで食べて学校へ行こうとする。
琴璃「あの・・・・それ制服じゃありませんよ。」
そう、冬の制服は自分の家にあるのだ。今来ている服は昨日の番に着ていた長いコートだった。
冬「うう・・・・・・よし、音葉、制服貸して・・・・・・・無理だぁ!!」
音葉「え?私の・・・・着るの・・・・・??」
なぜか恥ずかしがっている。
クリス「でも、どうしよう・・・・・学校無断欠勤しているよ・・・・」
ソフィ「とりあえず、早く行きませんと・・・・・」
無断欠勤をして指導されてしまっては卒業も怪しくなってしまう。
京子「あ、その心配は無いですよ。」
ニコッと笑って京子が話し出す。
京子「学校にはもう休む事を伝えてあるので、今日はゆっくり休んでいってください。あ、命さんと翡翠さんも連絡しておいたので、心配ないですよ。」
琴璃「あ〜そうだったのですか・・・・ありがとうございます。」
命「ありがとうございます。」
京子「いえいえ、皆さんだいぶお疲れだったので・・・・」
冬「でも・・・皆勤賞・・・・・・・」
紺「男が小さいことをめそめそしないのですよ〜」
冬「十分小さいやい!167しかないんだよ!」
クリス「え〜、ふ〜くんって167cmしかないの?私、165なんだけど・・・・」
音葉「私は170ですよ。」
冬「・・・・どうせないなら150でストップして欲しかった〜」
冬の身長は低くも無いが決して大きいというわけではない。でも、なんだか物足りない身長だった。170あれば普通ぐらいに思えるが、やはり男としては少し小さいぐらいだろう。それならば、とことん小さいほうがいいと思っていたのだ。
クリス「でも、最強の除霊師がこんな背が小さいとねぇ・・・・」
音葉「なんか、複雑よねぇ・・・・」
命「そ、そんなこと無いですよ〜」
翡翠「冬さんはかっこいいですよ〜。」
琴璃「かっこいいは別としても・・・・冬さんはすごいですよね。」
ソフィ「学校であったときはこんなこと考えられなかったですよね。」
やはり女の子が沢山いると会話が弾む。
冬「ん?・・・・・・・昨日の事覚えてるの・・・・?」
音葉「はぁ?冬?何言ってるの?忘れているわけ無いでしょ!」
クリス「ふ〜くんが腕をなくしたことも覚えているんだからね!!」
冬「しまった・・・・・・記憶消すの忘れていた・・・・・・」
完全に寝過ごしてしまい、記憶を消すタイミングが無かったのだ。
京子「あらあら・・・・」
紺「まあ、仕方ないですね。今日は皆さんぐっすり寝ていましたからね・・・・」
音葉「でも・・・・ねえ・・・・冬・・・・・」
冬「ん?」
音葉「その・・・・どうしても消さないといけないの・・・・・?」
冬「うん。例外は無いよ。」
音葉「私にとって・・・・・大切な事が・・・・・あったんだよ・・・・」
冬「でも・・・・・消さないと・・・・・」
大切な事。
それは冬と不注意であるがキスをしたことだ。
クリス「ふ〜くんと戦ってうれしかったんだよ?それでもダメなの?」
冬「うん。今までそうやってきたからね。」
命「でも、どんな風に記憶を消すのですか?」
翡翠「人間の記憶を消すのは難しいことではないですか?」
冬「うん。記憶を消すといっても、高度な記憶操作は出来ないからね。・・・例えば、『音葉が冬を好きになる』という事は出来ても。『音葉が一目ぼれをして冬を好きになる』というのは出来ないのだよ。」
音葉「え?・・・・そんな・・・・」
音葉は例に出されたので恥ずかしくなったのだ。
琴璃「なぜですか?」
冬「『好きになる』という感情は分かりやすくて操作しやすいけど、『一目ぼれ』となると話は変わるんだよ。一目ぼれという感情がどういうものなのか、そしてどこでそうやって一目ぼれをしたのか、とかまで操作しないといけないので難しくなっちゃうんだよ。」
翡翠「そうなんですか・・・」
冬「だから、昨日の出来事は『冬と一緒に戦った』から『第1除霊部隊と一緒にたたって冬を助けた』に変えるんだよ。本当は冬を助けたという所は要らないんだけど、なにせ、皆に顔を見られているから・・・・」
ソフィ「記憶の操作が難しいのですね。」
冬「そう。冬は居たんだけど、戦っていない、戦ったのは第1除霊部隊の人にするんだよ。たぶん、そう操作されるとしばらく頭の中がごちゃごちゃしたようになるけど、時間がたてば分からなくなるから大丈夫だよ。」
琴璃「でも・・・・・さびしいですね・・・・」
冬「まあ、しょうがないっすよ。」
ハハハと笑って冬が答える。
音葉(ねえ、冬・・・・・あのときの記憶も変える?)
冬(あの時?)
音葉が耳打ちをしてきた。
音葉(ほら・・・・2人っきりになったとき・・・・)
冬(あれか・・・・)
音葉(やっぱり消しちゃうの・・・・?)
悲しそうな声で囁く。
冬(たぶん、そこだけは残っちゃうかもしれない・・・・そういう、大事な事ってインパクト強いからね・・・・)
音葉(ごめんなさい・・・・その・・・・・ややこしくしちゃって・・・・)
冬(ううん・・・・・あの時はあのほうが良かったのかもしれない・・・・・記憶を消さなくて済むかもしれなかったからね・・・・)
音葉(え?どういうこと??)
冬(あ・・・ううん、こっちの話だよ)
音葉(・・・・・)




命「ふわぁぁぁぁぁ・・・・」
翡翠「いい天気ですねぇ・・・・・・」
空は雲ひとつ無く太陽がさんさんと照りつけている。そとは昨日から降った雪で白銀の世界が広がっている。
クリス「やぁ!それ!・・・・」
冬「のお!顔面は・・・・・ぶっ!」
ボフッ!!
喋っている途中で雪球が顔に当たる。冬の顔は雪まみれになってしまった
音葉「手加減はしませんよ!!」
間髪要れずに音葉も投げる。
冬「このやろう・・・・・本気になったる!!」
冬「シュ!シュ!シュ!」
三つの雪がつながったように飛んでいく。まるで機関銃で撃っているように正確に飛んでいく。
音葉「なんの!!」
音葉はそれを難なくかわす。
冬「ふ・・・かかったな!!」
ドスッ
格別大きい雪球が音葉の顔を直撃する。
音葉「うう〜冷たい・・・・やったなぁ!!」
クリス「こっちのいるよ!!」
冬「なんの!」
たった3人でやっているようには思えないほどに雪球が飛んでいる。しかもほとんどがきわどいコースを飛んでいって相手に外れている。さすが、普段戦い慣れているだけあって判断力がなみではない。
クリス「それ!それ!」
音葉「いっくよぉ!!」
シュ!シュ!シュ!!
冬「やば・・・・・」
カキィィィィン!
冬は飛んできた雪玉をすべて腕ではじき返す。
冬「あぶない・・・・」
ソフィ「元気ですねぇ・・・」
ソフィがお茶を持ってきた。
琴璃「昨日あんなに動いたのに・・・・」
命「それにしてもすごい攻防戦ですね。雪が見えない・・・」
翡翠「このままだと勝負つかなさそうですね。」
ソフィ「ですねぇ・・・お姉ちゃんも意地っ張りですからね。」
お茶を渡しながらソフィが喋る。
琴璃「でも、3人ともすごく楽しそうですよね〜。」
琴璃はお菓子も持ってくる。
命「雪合戦と言うか戦争になってますけどね・・・」
冬「く・・・・2対1では不利かな・・・・・」
音葉「やはり・・・・強いなぁ・・・・」
クリス「全部防がれちゃうよ。」
これまでに何千個と雪を投げてきているが、すべて腕で受け止められているか交わされているのだ。体に当たれば勝ちと言うルールなのだがまったく当たる気配がない。
冬「しゃあない・・・一気に片をつけるか・・・・」
カチャ・・・
一丁の銃を取り出す。
翡翠「あ!いつの間に!!」
その銃というのは翡翠が持っていた大型の銃のことであった。
命「でも・・・・雪合戦でどう使うのでしょうか・・・・」
霊気を発射させる武器なのだが、雪を発射させることはできない。その武器をどう使うと言うのだろうか?
冬「・・・・・・」
雪を銃口に詰める。
冬「バリブレプリカ、フルトランス・・・・・」
銃が輝き始める。本気で撃つようだ。
冬「落ちなさい!・・・・セブン!!・・・・ハード!!!スクエァ!!」
ドォォォォン!!
まさに十七聖典である。
雪がページのようにひらひら舞い落ちる。
カチャ!
冬は新しい弾を装てんする。
音葉「ええ!!」
クリス「やめ・・・・」
二人の前で雪が炸裂する。
ドォォォォォォン!!
冬「難しいなぁ・・・・」
冬は首をかしげる。銃に詰められた雪は一直線に二人目かげて飛んでいったのだ。どう考えても成功したように見える。
琴璃「・・・・・なんか冬さん間違えてますよね・・・・」
ソフィ「・・・・・服もそうだけど・・・・まさか、アノ人を真似てるのでしょうか・・・」
翡翠「まあ・・・私の名前も名前ですけどね・・・・・」
命「確かあの武器の名前は『三式聖浄化書』っていうんだっけ?」
翡翠「はい、そうですね。」
ちなみに、一式聖浄化書は戦車になっていて攻撃力は核攻撃並みである。そして、二式聖浄化書はガトリング銃になっている。なぜ、書と呼ばれているかと言うと、もともと、聖書の教えによって悪霊と倒していたのだが、時代が進むにつれて悪霊も強くあってきたので呪文や素手では太刀打ちできなくなってきたのだ。そのため、上層部は聖書と言う形で兵器を作ることにしたのだ。宗教団体が武器を持つこと各国で禁止していることなので作ることはできないが、聖書と言う形ならばなんら問題はないと言うことなのだ。
音葉「あぶないなぁ・・・・・」
クリス「卑怯だよ!武器を使うなんて!!」
冬「あのですね。2人で攻めるほうがよっぽど卑怯だと思いますけど?」
なぜか、口調まで違っている。あの人そっくりだ。
クリス「そっちがその気なら・・・・・」
カチャ!
クリスはハンドガンを取りだす。
音葉「うお!大丈夫なの?」
クリス「雪ぐらいならば打ち落とせますよ。」
まだまだ霊力だけでは威力は弱いが、雪を壊す程度の力は付いているはずだ。
冬「・・・・これは本気を出さなければなりませんね・・・・」
冬は雪を両手に持って構える。
冬「蜂の巣に・・・なりなさい!!」
シュ!シュ!シュ!
雪玉が一斉に飛んでいく。まるで、手投げナイフを投げているように見える。
琴璃「・・・・・冬さんって・・・・・ゲーマー??」
ソフィ「『しょうがないですね・・・・遠野君は』っていったら確実ですね。」
それを知っているほうも知っているほうだが・・・・・
命「あ、空中ジャンプした・・・・・」
翡翠「こっちは、竹刀で飛んでる〜」
クリス「貴方は・・・倒します。」
ソフィ「・・・・・おねえちゃん・・・・・」
ソフィも呆れているようだ。
・・・・
・・・・
京子「お昼出来ましたよ〜」
冬「え・・・・もうそんな時間?」
音葉「はぁ・・・・はぁ・・・・・」
クリス「もう疲れて動けないよ・・・・・・」
3人は大きな木に寄り添うように座っていた。
冬「というか、お昼までご馳走になってよかったのかな?」
京子「いえいえ、かまいませんよ。大勢で食べたほうが楽しいですし。」
命「どちらにしても雪のせいで道が通れないのでここで待っているしかないのですけどね。」
冬「家のほうは大丈夫なの?」
翡翠「はい、ここにいることを伝えてあるので大丈夫ですよ。」
紺「はやくしないと、ご飯冷めますよ〜」
部屋のほうから紺の声が聞こえる。
京子「さ、皆さんお部屋に行きましょうね。」
・・・・
・・・・
冬「で。なんで、夜までいるんだよ?」
もう外は真っ暗。
昼までに帰るつもりがあれよあれよと時間が過ぎていってもう夕飯ごろになってしまった。
京子「え?下心丸出し?」
冬「まあ、こんなに女の子に囲まれて・・・・・何言わすのですか!!」
顔を真っ赤にして反論しているが全然説得力がない。
音葉「ねえ・・・私たちそんなに魅力ないのかな・・・・・・」
パジャマ姿の音葉が冬に寄ってくる。
クリス「それも、なんか悲しいよね〜」
同じくパジャマ姿のクリスもよってくる。クリス達は音葉や琴璃からパジャマを借りていた。
冬「ば・・・ばか、それ以上近寄るな!!」
必死に止めようとしている。
音葉「私たち・・・・・ブラしていないんだよ・・・・」
見せ付けるように胸を張り出す。
クリス「これでも、魅力ないのかな・・・・・」
冬「・・・・・・・・」
いろんなところが元気になってきた・・・・
音葉「ねえ?冬・・・・・」
クリス「ふ〜くん・・・・・」
冬「う・・・・・」
決して大きくないが手のひらに収まりそうな胸。
手入れをしているのか、あまりにきびの無い肌。
細くて長い腕。
不完全な「女」の体つきをしている。「女の子」ではない、「女」なのだ。
冬「後悔してもしらないからね!!」
ガバッ!!
とりあえず、二人を押し倒す。
音葉&クリス「キャアッ!!」
京子「おお!」
京子は止めずにただそれを見ているだけだった。
冬「え〜と・・・・・・・」
左に音葉、右の腕にクリスのやわらかい胸の感触がする。その感触によって冬が止まってしまった。
音葉「・・・・・・・・」
クリス「・・・・・・・・」
なぜか抵抗しない。
冬「え?・・・・・あれ?」
思いっきり抵抗されると思っていたので、冬は拍子抜けしてしまう。
音葉&クリス「・・・・・・・・・」
しかも、その顔には悲しさや嫌がっている感じは受けない。恥じらいはあるが、どこか優しい顔をしている。お母さんが子供に見せるような、そんな顔だ。
京子(・・・・・・なんか面白いことになってますね!)
紺(こら!そんな事いわないの!!)
ゴツ!!
京子(痛いですよ・・・殴らなくても・・・・・)
冬をよそに、京子と紺で漫才か繰り広げられている。
音葉「・・・・・・いいよ・・・・・・」
クリス「ふ〜くんが望むのならば・・・・・・」
声には出さなかったが、口がそう動く。
冬「・・・・・・・」
いつの間にか冬の両手には二人の手が握られている。
冬「・・・・・・・」
参ったな、いった感じで二人を見下ろす。あと数センチで二人の胸の中に入れる。両手は二人に捕まっているのでどうにも抜け出せない。胸の中に入ったら最後、もうこの関係から逃げ出せなくなるだろう。
ソフィ&琴璃「・・・・お姉ちゃん・・・・・」
二人もその行方を見守る。
不思議と不安は無かった。冬がこのまま襲うようなことや、気が変わるようなことは無いと思うのだ。冬ならば安心して見届ける。そんな感じがしているのだ。
命「・・・・・・・」
翡翠「・・・・・・・・」
冬「・・・え・・・・あ・・・う・・・・」
音葉「・・・・どうしたの?・・・・・」
クリス「・・・・・大丈夫だから・・・・・・」
また声の無い喋りで冬だけに語りかける。
冬もこのまま飛び込みたいのは本音だった。でも、今の冬にはその勇気は無い。自分の命さえ守れないものがこんなに幸せになっていいものなのか、いやいけないはずだ。自分は不幸にしかなってはいけないのだ。そう、頭によぎる。
グィ!
二人は強引に冬を胸の中に入れた。そうしてやさしく抱きしめる。冬は二人に挟まれるような形になる。
冬「あ・・・・・」
クリス「大丈夫でしょ?」
音葉「女の子を待たせないでよ。」
冬の耳にダイレクトに語りかける。
冬「でも・・・・・」
琴璃「ふう・・・・・・」
ソフィ「うん・・・・・・」
なぜか、二人ともホッとしてしまった。
冬「でも・・・・・いいの?」
音葉「うん・・・・恥ずかしいけど・・・・・いい。」
クリス「・・・ふ〜くんが一緒だもん・・・・・」
冬はうれしかった。その場ですぐに答えたかった。抱きつきたかった。でも、出来ない。
やってはいけない。してはいけない。
答えたら最後。この子達も不幸にしてしまう。そんなことはやってはいけない。
この子達まで自分の不幸を擦り付けてはだめだ・・・・・
音葉「・・・・・いいんだよ・・・・・・」
クリス「・・・・準備は出来てるよ・・・・・」
二人の暖かい体温が冬に伝わってくる。
冬「・・・・出来ない・・・・・・」
音葉「なんで?」
クリス「大丈夫だよ。」
冬「それは・・・そうなんだけど・・・僕には君達と・・・なる資格は無いんだよ・・・・」
音葉「そんなこと無いよ・・・・・」
クリス「・・・・・資格とか・・・そんなの必要ないよ・・・・・」
冬「・・・・いや、資格なんて無いよ・・・君たちを幸せにすることは出来ないよ・・・・・」
音葉「幸せとか・・・・不幸せとか・・・・そういうのって自分だけで決めるものなのかな?」
クリス「私たちは幸せになってるよ?」
冬「でも・・・・・このままだと・・・・・・・・・・」
クリス「そうやって、自分だけで考えて・・・・・ふ〜くんは自分だけで考えすぎだよ・・・全部を背負わないでよ・・・・」
ぎゅっと抱きしめる手が強くなる。
音葉「・・・・・私たちにも私たちの不幸や幸福があるんだよ。冬とは食い違っているかもしれないけど・・・・・でも、私たちはこのままでいいと思っているからね。」
冬「・・・・・・・・・」
そう、人間の価値観は人それぞれ違う。
ある人はこれが幸福に思うこともあるが、ある人はそれが不幸のことかもしれないのだ。
冬が不幸と決めても、その価値観が音葉やクリスに当てはまるとも限らないのだ。
・・・・・・・
・・・・・・・

冬「さて・・・・・・」
京子「記憶を消すのですか?」
いまは深夜2時。みんなは寝てしまっている。
冬「・・・・起きていたのですか・・・・・・」
京子「はい・・・・・最後まで見届けるのが私の役目ですから。」
冬「・・・・・・・・今日ほど記憶を消すのに躊躇いのある事はありませんでした・・・」
京子「・・・・・・・」
冬「いろいろと仲間を作りすぎました・・・・・・そして、出会いすぎた・・・・・」
京子「・・・・悲しいですね・・・・・・」
冬「仕方ありませんよ・・・・・・これも仕事です。」
京子「また会う日を楽しみにしていますね。」
冬「はい、そのときはよろしくお願いします。」
スー・・・・
京子がふすまの中に消えていった。
冬「ふう・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・
冬が光り始める。
冬「さよなら。今までの記憶・・・・・・・」
パァァァァァ・・・・
あたりが昼のように明るくなる。
そして、一瞬にしてその光は消えてしまう。
冬「・・・・・・・・よし・・・・・」
しばらく冬はその場で立ち尽くしていた。
冬「・・・・・・・」
そして、冬は冬の夜に消えていった。