「鎖の薔薇」
第12話:「鎖の薔薇」



ミコト「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
ヒスイ「勝てない・・・・・・・・・・・・」
男「ふっ・・・・・もう降参するのか?」
時間は午前3時。
3人は稲沢の隣の市、一宮(いちのみや)の一宮駅にいた。
ゴォォォォォ・・・・・・
最近急に寒くなったせいで、辺りは雪がちらつき始めている。
冬に雪は当たり前だが、この地方で新年を明ける前に雪が振るのはとても珍しい。
ミコト「・・・・翡翠ちゃん・・・・・大丈夫?」
命(ミコト)が心配する。
2人ともあたりに大量の血をこぼしている。あたりに積もりかけた雪に血がかかって赤く染めている。
翡翠「なんとかね・・・・・・でも・・・・・ダメみたい・・・・」
力の無い声で答える。
男「ふふふ・・・・・弱い・・・弱すぎる・・・・」
男は2人を見下ろすように立っている。
しかもあんなにボロボロの2人に対し、男は全然怪我もしていない。
男「これでこの土地は我がものになる・・・・・」
明らかに前に見た悪霊とは違う。
今まで戦ってきた悪霊は人間の言葉こそ喋るが、どちらかというと獣に近かった。しかし、ここにいる男は紛れも無く人間の姿をしていて、獣らしい様子がまったく無い。
男「これで・・・・・・終わりだ・・・・・・」
男がふらふらと立っている翡翠の首をつかんでそのまま腕を上げる。
翡翠「う・・・・ぐ・・・・・・」
息ができなくて翡翠は苦しむ。しかし、その男の力は強く決して動こうとはしない。
命「翡翠ちゃん!」
命が男の行動を制止しようと立ちあげるが、もう体力が限界になっていて、言うことを聞いてくれない。
ドスッ!
男の腕に血が飛び散る。
翡翠がゆっくりと地面に落ちていく。
ドサッ
翡翠は抵抗も無くゆっくりと落ちていく。
命はその光景を黙ってみる事しかできなかった。
ゴォォォォォ・・・・・・
轟々と振付ける雪。
それは吹雪にも近い物があり、男の辺りから雪で見えなくなっている。
男「ぐぬぬぬぬ・・・・・・・誰だ!」
男は腕を押さえる。
男の腕には一本の長刀が刺さっていた。
男が見上げた先には何者かが電柱の上に立ていた。
???「たくっ・・・・鬼海だけで精一杯なのに・・・・」
何者かはスタッと命の近くに飛び降りる。さっきは遠くて見えなかったがその者は長いレインコートを着ていた。胸の辺りには十字架の紋章が見える。
命「貴方は・・・・・・いや、その前にここには結界がはってあるので入れないはず・・・・」
そう、除礼者がおやけに出ないのはこのこともあるのだ。結界には指定された人意外は入れないようになっていて、結界の中は現実世界と隔離された別の世界になるのだ。だから、普通の人が結界に入っても実世界の空間に入るのでいつもと変わらない風景が見えるのだ。
コートの男「それより、翡翠さんを見なくて大丈夫?」
命ははっとしたように翡翠に駆け寄り、後に続いてコートの男も駆け寄る。
命「大丈夫?・・・」
翡翠「ゲホッ!・・・・ゴホッ!」
翡翠はよだれを出しながら咳き込む。どうやら首の骨は折れていないらしい。
コートの男「さて・・・・・復活したてだけど・・・・相手できるかな・・・」
コツコツ・・・
ブーツを鳴らして男と向き合う。
男「・・・・・貴様・・・・第1除霊部隊の者か?」
コートの男「ああ、そうだけど?」
命「第1除霊部隊って・・・・・・キリスト教除霊部の総本山じゃない!何でそんな人が・・・」
第1除霊部隊。あまり知られていないがキリスト教には除霊を行う武装集団があり、それが除霊部隊と呼ばれるのだ。そして、この部隊は1から20まであり、各地に配置されている。1がローマ周辺のヨーロッパ、2がアメリカ大陸、3が中東アジア、4が極東、5がオーストラリア大陸周辺・・・・といった風になっている。そして、この部隊から支部として活躍しているのが、クリスやソフィのような人たちになるのだ。
そして、この部隊は数が小さいほど強い部隊であり、第1除霊部隊は世界最強の部隊になる(国の軍隊も含めて)。
翡翠「え・・・ストラテゴス様が何故・・・・・」
ストラテゴスというのはギリシャ語で将軍という意味になる。
キリスト教の将軍という意味でそういう名前がつけられたのだ。
コートの男「そう・・・・翡翠さん気づいた?・・・・よかった。」
コートの男が後姿で話す。
コートの男「僕は・・・エフォロスって言われてた。多分この名前は聞き覚えあると思う。」
翡翠「え?エフォロスってかつての英雄ですよね・・・・・」
エフォロス、日本語になおすと監督官という名前になる。これはもともと紀元前の国の役所に一つの名前であり、王や国民を監視して政治を握った役所なのだ。人々は悪霊や妖怪を監視して自由を許さないその行動をエフォロス(監督官)と呼んだのだ。
命「私は巫女だからよく分からないけど・・・・すごい人なの?」
翡翠「うん・・・キリスト教の中ではかなり有名な人だよ。なにせ、300年に一回復活して災いごとを解決するという言い伝えもあるの・・・・・正式な文書にも戦歴が書いてあって、300年前に突如出てきてから死ぬまでの間に1万を超える悪霊を除去してきたらしいの・・・・・」
命「1万!桁が違うよ・・・・・」
翡翠「だから・・・・・私も信じれないの・・・・」
エフォロス「まあ、仕方ないか・・・人間が転生なんてできる分けがないからね・・・」
男「ふははは・・・・・第1除霊部隊か・・・相手にとって不足なし!・・・お前を排除する。」
エフォロス「ああ、いいよ。お前に悪夢を見せてやる!」
コートから二本の長刀を出して構える。
男「我が一族の餌になれ!」
男もかまわず突っ込んでいく。
ギィィィィン!
男のツメとエフォロスの剣がにらみ合いをする。
力は互角といったところだろうか。
エフォロス「お前は何をしにここに来た!」
男「無論。鬼海が生まれればその地にお前がやってくることは知っている。」
エフェロス「じゃあ、あの子達をやったのはなぜだ!」
男「お前を出すための餌だ!」
ブチッ!
エフォロスの中にある何かが切れた。
この子達は必死に戦った。
こいつの私利私欲のために・・・・・
ましてや、自分の為に傷ついてしまったのだ。
エフォロス「貴様っ!・・・・人を何だと思っているんだ!」
ちらっとエフォロスは2人を見る。
2人は、動いていないにもかかわらず息が荒い。
そればかりか、血がじわじわ流れていて早く処置をしないと危険な状態にあった。
命「・・・・大丈夫ですよ。」
琴璃「・・・気にしないでください。」
2人はエフォロスの事を察したのか、無理に笑顔を作って答える。
しかし、その笑顔は表面だけの事が手に取るように分かってしまう。
エフォロス「すまない・・・・・・・」
いつもそうだ。実は転生前のことなどあまり覚えていない。
覚えているのは鬼海をこの手で封印した事のみ。他の記憶はすべてない。しかし、自分を追う者は後を絶たないのだ。
復讐。
恨み。
自分の名誉。
どれもこれも、エフォロスにとっていらない物だった。
あげれるならすぐにあげてしまいたい。しかし、相手は自分の勝ったという記憶が欲しいのだ。今まで負け続けていた霊たちに最強の証を得るために自分と戦うのだ。
そのために悪霊は手段を問わない。
聞く話によると、戦うためだけに二つの国を戦争にした悪霊もいた。
元は人間だった悪霊も、いまでは人間の心など持ってはいない。
あるのは、
欲。
恨み。
怒り。
本能。
そんなものだった。
男「伝説の男はこんなに弱いのか?消し抜けだな・・・・・」
一つも攻撃が入らないのに男はのんきでいる。
エフォロス「く・・・・力の解放がまだ十分にできていない・・・・・」
攻勢でもなく後退でもない。つまりこう着状態にいる。
このまま行けば体力の限界のあるエフェロスが負けてしまう。
翡翠「・・・・・・エフォロスさま・・・・」
命「がんばって・・・・・・」
雪の降る中、2人は祈り続ける。
京子「さあ、皆さん!早く来てください!」
結界の中に京子、音葉、琴璃の三人が入ってきた。
エフォロス「やっときたか・・・・・」
男とエフォロスは一時なれて間合いを取る。
音葉「ねえ、あのロングコートは誰?」
琴璃「あの男の人は悪霊ってことは分かるのですが・・・・・」
京子「・・・・・・・あの人は味方です。今はそれだけしか言えません。」
京子が命と翡翠の看病をしながら言う。
音葉「なぜ・・・・・?」
京子「・・・・・あの人は人間ですが・・・・人じゃありません・・・・」
琴璃「どういうこと?」
京子「そんな・・・・感じがします・・・・・」
じつは京子にもエフォロスの正体が分からなかった。
しかし、敵ではないがなにか除霊者の感じとは違う物を感じた。
エフォロス「音葉、琴璃!来てくれてありがとうな。」
音葉「何で私たちの名前を・・・?」
京子「貴方ですか・・・・さっき電話をくれた人は・・・・・」
エフォロス「はい、僕です。この相手は私では倒せませんから・・・・」
どこか聞いたことのある声だった。
琴璃「・・・・・・・どこか出会いませんでした?」
いつも聞いているような・・・そんな声だった。
エフォロス「さてね・・・気のせいじゃないの?」
琴璃「そうですよね・・・・・」
こんなロングコートを着た除霊者を今まで見たことが無い。
やはり、他人の空似なのだろうか・・・・・・
男「おお・・・なんと、獲物につられて餌が連れるとは・・・・・」
エフォロス「その餌はどうなのかな・・・鮫が連れたのかもしれないよ・・・・」
また、2人は構える。
音葉「後で考えよう。今はこいつを倒す事だけを考えよう。」
琴璃「はい、援護します。」
まだ、分からない事だらけだが、とりあえずエフェロスと一緒に男を倒す事が先決だ。
エフォロス「ありがとう・・・・一気にかたをつけよう。」
ダダダダ!!
今度はエフォロスが先に出た。
ガキィィィィィン!
ツメと刃がにらみ合う。
音葉「やぁ!」
琴璃「第一発!」
二本の矢が男めがけて飛んでいく。
男「ふがぁぁぁぁぁぁぁ!」
男は霊気を貯めて一気に放出する。
ゴォォォォォォォ!!!
霊気を放出すると、男を中心にして放射状にものすごい突風が起こる。街灯は根こそぎもぎ取れて、あたりの窓ガラスのガラスは粉々に引き飛ぶ。
音葉「きゃぁ!」
琴璃「きゃやぁ!」
2人もすごい速さでビルの壁見たたき付けられる。
思いっきり胸を打ってしばらく息ができない。
エフォロス「く・・・・・2人とも・・・大丈夫か?」
エフォロスは剣を深くさして突風から身を守った。
音葉「ガハッ!・・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
琴璃「ゲホッ・・・・ゴホッ!・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・」
まだ一撃しか食らっていないのに、2人はよろよろになっている。
エフォロス「いままでの敵とは段違いに強いから気をつけてね!」
音葉「はい・・・・・・」
琴璃「その・・・・・ようですね・・・・・」
口から血が垂れている。
今にも倒れそうな感じだ。でも、二人は立ち上がり男に刃を向ける。
エフォロス「ごめんな・・・・こんな敵・・・ひとりで倒さないといけないのに・・・」
音葉「なにいってるのよ!貴方一人で英雄になれるわけ無いでしょ!」
琴璃「私たちは・・・この敵を倒すためにここにいるのですよ。私たちを信用してください!」
エフォロス「ふっあはははは・・・・・そうだね・・・怒りで考えが極端になっていたようだ・・・ありがとう。落ち着いたよ。」
そう、人間一人では何もできない。何人かが集まることによって達成されるのだ。たとえ一人で解決しているように見えて、バックでは沢山の人が後押しをしていてくれている。決して一人じゃない。
今は音葉と琴璃という頼もしい仲間が加わっているのだ。
なのに、エフォロスは男を倒すのは自分ひとりだけと決め付けてしまった。そのために、音葉と琴璃を傷つけた。
自分の思い込みのせいで―
エフォロス「じゃあ、2人とも・・・今度は一緒に行くよ!」
音葉「わかった!」
琴璃「はい!」
3人は横に並ぶ。
エフォロス「あ、これ付けていい?」
そいって、コートの中からクリップホン(耳にクリップ式で挟むヘッドホンのこと)を取り出す。
音葉「大丈夫なの?」
琴璃「周りの音を聞かないと・・・・」
エフォロス「大丈夫、音はかなり小さいし、リズムをつかむためにこれを聞かないと調子が出ないんだよ。」
音葉「まあ、いいよ。」
琴璃「それなら・・・・・分かりました。」
3人は改めて武器を構える。
音葉と琴璃は今度、弓矢から刀に武器を変える。
エフォロス「いくぞ!」
ピッ!
音楽も一緒に流れる。
ダダダッダ!
エフォロスはまっすく男に突っ込み、音葉と琴璃は横に回る。
ダン!ダン!ダン!
重低音にあわせてエフォロスが男に拳をぶつける。
キュ・・・・
軽くステップを踏んで男の攻撃を避ける。
エフォロス「お願い!」
エフォロスが高く跳躍する。
それ目かげて男も迎撃に回るが、音葉と琴璃によって止められてしまう。
キィィィィン!
男もとっさにツメを出して刀をカードする。
ドス!ドス!ダン!
跳躍したエフォロスが戻ってきて3連撃の足技を食らわせる。
男「く・・・・何が起きているというのだ・・・・・!!」
男は子供の様に遊ばれている。
音葉も琴璃もいまの自分たちを疑う。
いくら倒す目的が一緒なのでともに戦っているとはいえ、かなりエフォロスと息が合っているのだ。しかも、寸分の狂いも無い。むしろエフォロスがあわせて戦っていてくれているような気さえする。
エフォロス「ラスト決めるよ!」
ドスッ!ドスッ!
エフォロスは長刀を男の腕に差して攻撃をさせないようにした。
男「なに!・・・・・」
音葉「行くよ!」
琴璃「はい!」
ズバッ!ズバッ!
男「くわぁぁぁぁぁ・・・・・」
男「ふはははははは!!!またこの地で会おう!」
男の姿が無くなる。
そして結界も解けてしまう。
エフォロス「ち・・・・・遅かったか・・・・・」
音葉「そのようだね・・・・・・」
琴璃「ですね・・・・」
三人は空を見つめる。
そこには大きな月が出ていて雪がやんでいた。
男は月の光のせいで実体が消えてしまったのだ。霊力の大きい悪霊は少しの光も嫌うのだ。だから自己防衛が働いて自分も相手も干渉できない状態になってしまうのだ。
京子「・・・・・お疲れ様です〜」
京子が毛布を持ってきてこちらにやってきた。
音葉「あ、京子さん・・・・お疲れ様です。」
琴璃「あの2人さんはどうしましたか?」
京子「応急手当はしておきました。2.3日休めば大丈夫でしょう。」
エフォロス「そうですか・・・・良かった。」
音葉「あ・・・・エフォロスさん・・・?」
エフォロス「え?はい。」
音葉「ありがとう。手伝ってくれて・・・・」
エフォロス「あ、はい、聞かないのですか?」
琴璃「何らかの理由で姿を隠しているのですよね?そんなことを聞くなんてルール違反ですよ。」
エフォロス「ありがとう、そうしてもらえるとうれしいよ。」
音葉「でも・・・やっぱり一個だけ聞かせて。」
エフォロス「答えれるなら・・・・」
音葉「貴方は何のために霊と戦っているのですか?」
少し間がえてエフォロスはゆっくりとした口調で話し始める。
エフォロス「宿命。ですかね?僕は、鬼海をずっと追っています。そう、前世の時代もたぶん来世も・・・・僕の一生は鬼海を倒すだけの一生なんですよ。キリスト教では、英雄にされてますが、そんなことありません。至って一般人なんですよ。ただ違う点は、運命が生まれたときから決まっている点。ですね。」
琴璃「じゃあ、鬼海を倒したらどうするのですか?」
エフォロス「・・・・・・存在がいなくなりますね。」
京子「貴方は・・・・あのときの人ですか?」
エフォロス「そうですね、京子さんとは前世で会いましたね。」
京子「・・・・また・・・・行ってしまうのですか?」
京子が悲しい顔をする。
音葉と琴璃は何の事かさっぱりわからない。
エフォロス「定めならば・・・・・・・・」
京子「なんとか、止められないのですか?」
珍しく京子が人に食いつく。どうやら何か深い想いがあるようだ。
エフォロス「できるかもしれません・・・・でも、時間が無さ過ぎました・・・・僕にはこの定めを止める力がありません・・・」
京子「そうですか・・・・・ごめんなさい・・・・引き止めたりして・・・・」
エフォロス「いえ、もともと私のほうが身勝手なのですから・・・・」
京子「ふふふ・・・違いありませんね。どうですか?車に乗っていきますか?」
そういって、ロータリーに止めてある一台の車の指をさす。
命「ありがとうござます〜」
翡翠「がりがとうござました。」
そばには命と翡翠がいた。
エフォロス「・・・・・」
エフォロスがそわそわし始めた。どうやら迷っているらしい。
音葉「あ〜もう!じれったい!乗りなさい!」
強引にエフォロスを車に押し込む。
エフォロス「ちょ・・・・まて!」
バタン!
いきおいよく扉を閉める。
音葉「これで、いいわけなしだよ!」
エフォロス「音葉って意外に強引なんだね・・・・・」
車はワゴンなので6人丁度入る。
運転席は京子が乗って、二列目には音葉と琴璃、三列目には命とエフォロス翡翠の順に入る。
京子「じゃあ、しゅぱ〜つ!」
ブロロロロ・・・・・
車が動き出す。
エフォロス「あの・・・・・・」
音葉「え?なに?」
エフォロス「皆そろってこっちを見ないでください・・・・狭いです。」
音葉、琴璃、命、翡翠全員がエフォロスを覗き込む。鼻までの襟とシスターが頭にかぶる顔しか出ない物をかぶっているので正体はばれないと思うが、かなりきわどい。
命「でも・・・やっぱり気になりますよ・・・」
ふう、とエフォロスはため息をついて肩を落とす。
エフォロス「顔は見せられないけど、そのほかなら教えるよ・・・」
琴璃「え、あ、いいですよ。」
あわてて遠慮するが、もう態度で出てしまったので説得力が無い。
エフォロス「声や雰囲気で分かると思うけど・・・僕は日本人で稲沢出身です。」
翡翠「え〜こんなところから立派な人が出てるなんて・・・・・」
第1除霊部隊は世界中で選ばれた者しかなれない、そのためいくら聖職者であっても人目合えるだけで幸運である。
エフォロス「まあ、あまり出身地は言わないですからね・・・・それで、名前は・・・・」
言いかけて、また黙ってしまう。
琴璃「エフォロスさん?」
エフォロス「・・・・・フユ・・・・」
翡翠「え?」
聞こえなかったわけではないが、なぜかエフォロスはボソッと答えた。
エフォロス「フユといいます。」
琴璃「え・・・・・それは・・・・・・」
音葉「フユ・・・・・・・」
音葉と琴璃はその言葉を聞いて考えていたことが一つにまとまった。
フユ・・・・・・
冬・・・・・・
しゅん・・・・・
永月 冬
そんなはずは無い。
あの人はこの人の様に戦えるはがない・・・・・
そう、素質を持っていない。
でも、この声・・・
後姿・・・・・
その喋り方・・・・・・
ありえない。
一般人が世界に恐れられるような霊能力者になれるはずが無い。


でも・・・・・・
この人の事は―

知っているような気がする―


いつも会っているような・・・
そんな気がする―

音葉「ねえ・・・・」
フユ「はい?」
音葉「冬・・・・・なの?」
おそるおそる聞いてみる。
答えは分かっている。
そう、この人は絶対に冬ではない。
琴璃も一緒のことを考えていたようで、じっとフユを見つめる。
フユ「音葉さんと琴璃さんは僕に心当たりがる・・・・といいたいのですね?」
鋭い意見が帰ってきた。
音葉「だって、その声、しゃべり方、私たちの名前を知っている・・・・これだけそろえば疑いたくもなりますよ!」
琴璃「・・・・・・・・」
琴璃も黙って聞く。
フユ「冬とフユですか・・・・・私は冬ではありません。でも、彼と別ではありません。」
命「え?どういうこと?」
フユ「彼とは別の存在ですが、まったく関係ないというわけではありません。闇の存在、影の存在なのです。」
翡翠「え・・・意味が・・・・」
フユ「はい、分からないほうがいいと思います。どうせ消えてしまう存在なのですから・・・」
どこか悲しい声でフユは喋った。
音葉「・・・・・うん、わかった。」
このとき音葉と琴璃は確信した。
フユが冬であることを―
しかし、意味が分からない。
いくらえらい地位にいるとはいっても、何も姿を隠したりする必要性が見つからないのだ。
そして、なぜ、こんな曖昧なことばを喋るのか・・・・
フユ「・・・・・そうだ、皆さん。」
音葉「はい?」
フユ「明日もまた同じところに来てください。今度こそあの男と決着をつけなければなりません。」
琴璃「そうですね・・・・・・」
命「すみません・・・・・・私たちが力不足なばっかりに・・・・」
ギリッっと拳を握って謝る。
翡翠「本当に申し訳ありません・・・・」
フユ「いや・・・・あの霊は僕を追ってきた霊だから君たちには関係ありません。僕のほうこそ申し訳ありません・・・・・自分のやるべきことを押し付けてしまって・・・しかも、君たちを傷つけてしまって・・・・」
京子「はい、命さん翡翠さん、つきましたよ〜」
車が止まり、京子が呼んでいる。
命「すみません・・・・ありがとうございます。」
翡翠「本当に今日はありがとうございました。」
ガラララ・・・・
ワゴンの後ろの戸が開く。
音葉「明日はがんばろうね。」
琴璃「おやすみなさい~明日会いましょう。」
命「うん、明日こそは・・・・・」
翡翠「はい、がんばりましょう。」
2人が車を降りて手を振る。
フユ「また明日会いましょうね。」
ガラララ・・・・・
バタン!
車の戸が閉まり、動き出す。
ブロロロ・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

車の中に静寂が走る。
別に悲しい事が起きたわけでもないが、重く暗い空気だ。

・・・・・・・・

でも、誰も喋ろうとしない。
音葉「・・・・・・・・」
琴璃「・・・・・・・・」
フユ「・・・・・・・・」
誰もがこの静寂を嫌っていた。
しかし、話す話題が無い。
というより、何も考えられないのだ。
真っ白。
空白。
無。
そんな感じだった。
考えたいが何を考えたら良いのか分からない。
・・・・・・・・

・・・・・・・・

車の外には景色が動いている。
街灯の光が一筋の線になって走っている。
時と折とおる対抗車はその風景をさえぎる陰になっていた。

重い。

何か話さなければ。

押しつぶされそうだ。

音葉「あの・・・・・・」
静寂を破ったのは、音葉だった。
音葉「・・・・・・えと・・・・・」
言いたい事がのどから出ない。
ためらう必要は無いのに・・・・・・
言葉が出ない。

のどが凍り付いてしまったようだ。
音葉「あの男を・・・・・倒したら、どうするのですか?」
フユ「うん・・・・・・・・」
まあ、あの男を倒すために現れたのだ。男さえ倒せばここにいる必要は無くなる。
フユ「消えるよ。存在ごと。」
琴璃「存在?」
消えるという意味は分かる。
つまり、「さよなら」だ。
しかし、存在は消えない。
ここにいたという存在は消す事ができない。
誰かの記憶が残っている限り。
フユ「そう、僕の関係する存在は無かった事になるんだよ。きれいさっぱりとね。」
淡々と喋る。
そうか、存在が無くなるのか・・・・
最初からいないことになる・・・・・
え―
記憶が消える?
音葉「記憶からなくなるの?」
フユ「うん、だから、僕の事を知っている必要は無いよ・・・・今までそうやって来たんだから・・・・」
実に悲しい人生。
仲間を作っても。
恋人を作っても。
一生に残る大恋愛をしても。
一生に残る怪我をしても。
みんな、みんな、消えてしまうのだ。
跡形も無く。
形跡も無く。
すっかりと。
真っ白に。
この雪の様に。
真っ白に。
冬に降る雪の様に―
あ。
だから、「フユ」という名前なのか。
寂しく悲しい季節「冬」
寒い。心のような「冬」
そのとき、2人は悲しい名前の由来を知ってしまった。
音葉「・・・・・・悲しすぎるよ・・・・・そんなの・・・」
フユ「かもしれないね・・・・・でも、これが「定め」「運命」なんだよ・・・・僕の」
フユは淡々と喋り続ける。
琴璃「どうにか・・・・ならないのですか・・・・」
フユ「多分無理だと思う・・・・過去3回同じ事をしたけど結局結末は一緒だった。」
そう、運命とは自分で切り開く物だが、決して無限ではない。
過去の歴史がそうだ。
歴史に分岐点など無い。あるのは事実一つだけ。
先(未来)は決まっていないが、もうすでにレールは引かれてしまっている。
あとは、それに向かって走るだけなのだ。
運命は決まってはいないが、道は一つしかない。
後戻りもできなければ、先にも進めない。
道は唯一つ。
限られた物なのだ。
・・・・・
・・・・・
・・・・・