「放浪者」
・第11話:「放浪者」


―学校の近くのコンビニの前―
クリス「ねえ、ソフィ、ちょっと待って。」
ソフィ「え?どうしたのお姉ちゃん?」
急に自転車を止めて交差点の脇ある喫茶店をみる。
クリス「・・・・あれ、放浪霊だよね?」
クリスが指をさした方向には小さな子供が2人おびえながらきょろきょろ見渡していた。
ソフィ「合ってみましょう。」
タタタタ・・・・
急いでその子供に近寄る。
クリス「・・・・大丈夫?」
ソフィ「ねえ、どうしてこんなところにいるのですか?」
アカリ「え?お姉ちゃんたち私を無視しないのぉ?」
タケル「無視しないの?」
どうやら、自分が霊になっていることを知らないらしい。
クリス「うん、怖かったでしょ・・・おいで・・・」
アカリ「お姉ちゃん!・・・・・」
タケル「うわぁぁぁぁ・・・・・」
2人は泣きながらアカリはクリスに、タケルはソフィに抱きついた。
冬「寒いなぁ・・・・」
悠「ああ、寒いねぇ〜」
そのとき、反対側の歩道に冬と悠が通る。
冬「・・・・あれ?クリスたち何やってるんだ?」
悠「え?・・・・・あ。あそこか?」
交差点の向かい側でクリス達がしゃがんで何かをしてる。
冬「子供抱いてるぞ?・・・・しかも泣いてるし・・・・」
悠「子供?・・・え、そんなの抱いていないぞ?・・・でも、2人して電柱を見て何やってるんだ?」
冬「え?見えないの?」
悠「は?なにが?」
冬「え〜・・・・・・」
自転車をこぎながらなのでだんだん見えなくなっていく。
冬(見間違いかなぁ・・・・・)

クリス「よしよし・・・・・大丈夫。大丈夫よ。」
ソフィ「いろんな人に無視されていたのですね・・・」
アケミ&タケル「うわぁぁぁぁぁ・・・・」
ぽろぽろと大粒の涙を流してなく子供たち。
どうやら、この子は死んで間もない子供のようだ。
子供たちが霊になったと分からない事は良くある事なのだ。それは、死んだ直後から前の数分の記憶がなくなるためである。交通事故でぶつかった記憶がなくなるのと一緒で心が恐怖を取り除いてしまうのだ。そのため、死んだときの記憶がなく気がついたら霊になっていた。という事なのだ。また、子供は知能が低い事もあり、自分が死んで霊になた事を実感できないのだ。
クリス「ねえ、話せるかな?」
アケミ「うん・・・・」
ソフィ「君は・・・・?」
タケル「うん・・・ありがと、お姉ちゃん。」
ごしごしと涙をふいてしっかりと2人を見る。
クリス「貴方たちはどこから来たの?」
アケミ「わかんない・・・・何か声のする方向へ歩いたら迷子になっちゃって・・・」
タケル「いまは、声はしないよ。」
ソフィ「そうですか・・じゃあ、君たちはどうしてこうなっちゃったのかな?」
アケミ「昨日の前にお父さんとお母さんで車に乗っていたの・・・そうして、前から車が飛び出して・・・・ガガガ!とか大きな音がして、気がついたら、タケルと一緒に外に出てたの。」
クリス「お父さんとお母さんって・・・・・」
タケル「少したったら救急車とお巡りさんがきてね、なにかやてったの、僕たちの車はぺっシャンコなちゃってて、お父さんも・・・・お母さんも・・・・ペシャンコ・・・・に・・・・うう・・・」
また泣き出してしまった、どうやら2人の記憶には事故の記憶は残っていたらしい、自分が死んだ事を受け止められないでいるだけなようだ。
クリス「ああ、ごめん・・・・よしよし・・・・泣かないで・・・・」
タケルを抱きしめる。
ソフィ「お姉ちゃんの家に来ませんか?お父さんとお母さんに会えるかもしれません。」
アケミ「でも・・・・知らない人にはついていっちゃダメなんだよ。」
クリス「そうだよねぇ・・・・・」
何とか説得して連れて帰りたいのだが、今の世の中は物騒になってしまったので簡単に連れて行くことができない。
ソフィ「私たちね、シスターっていうお仕事しているんですよ。」
タケル「しすた〜?」
クリス「ん〜、君たちみたいな迷子を道案内したり、お父さんとお母さんに合わせる仕事かな?」
もちろん、霊だけ対象だが。
ソフィ「よく、テレビとかで見ませんか?大きな十字架の前でこういう風にひざを付いて祈るのですよ。」
ソフィは地面にひざを付いて「お祈り」のポーズをとる。
アケミ「あ〜〜あの魔法とか使って悪者を倒すのでしょ!!」
クリス「ん〜ちょっと違うけど、そんなところかな?」
よくテレビゲームとかで修道僧は回復役やサポート役についていたりするが、それは誤解である。どちらかというと前線に出て戦うほうである。
タケル「あの、ヒールとかやってく勇者を助けてくれる人だよね?」
クリス「そうそう!私たちそういう人だから、怖い人じゃないでしょ?」
う〜ん・・・と子供たちは考える。
ソフィ「だめですか?」
というか、鬼海がいるところに子供の霊をおいて置けないのが現状である。
アケミ「うん、お姉ちゃんの家に行く!」
タケル「絶対にお父さんとお母さんに合わせてくれるよね?」
クリス「うん、絶対合わせてあげる。」
ドンッを胸をたたいてクリスは言った。



―教会―
タケル「わ〜・・・・ゲームみたい・・・・」
そことは、ゲームの世界でしか見た事の無い大きな十字架、きれいなステンドグラスがった。
クリス「どう?驚いた?」
アケミ「うん、ここで結婚式とかやるんだよね?」
ソフィ「そうですね。結婚式もやりますね。」
2人とも目をきらきらして見渡す。
ゲームの世界。
お嫁さん。
両方とも夢の世界なのだ。それが今ここにある。
エミカ「この子が・・・・・ですね・」
ソフィ「はい、この子です。」
タケル「あ!天使だ!」
アケミ「ほんとだ!背中に羽が生えてる!」
エミカは少し天界に用事があったので羽を出していたのだ。
エミカ「あ、しまうの忘れた。」
クリス「ははは・・・ほら、本物の天使様だよ〜」
エミカ「こら!間違った・・・・・」
アケミ「きれいな羽〜」
タケル「すげ〜」
エミカ「・・・・・・ほりゃ!」
尊敬されるのは気分が悪くないので二人の前で飛んでみせる。
アケミ「いいなぁ・・・・」
タケル「かっこいい!」
バサツ!バサッ!
純白の白い羽で教会の中を飛び回る。
ソマリア「ふふふ・・・・騒がしいですね。」
こちらも、天界に用事があったので羽を出したままだった。
クリス「あ、お帰りなさい。」
ソフィ「お帰りなさい。」
アケミ「おじゃましています〜」
タケル「わ!こっちも羽が生えてる!」
ソマリア「あら、かわいい訪問者ですね。こんにちは。」
アケミ「こんにちは。」
タケル「こんにちは〜」
クリス「この方は神様だよ〜」
ソマリア「え?なんですか?」
アケミ「神様までいるの?!」
ソフィ「特別にいます。本当はいませんよ〜」
クリス「エミカさん・・・連れてこれましたか?」
エミカ「うん、ばっちりね。」
エミカはグーサインを出す。
エミカ「もう、いいですよ。」
教会に二人の影が現れる。
父「アケミ!タケル!」
母「アケミちゃん!タケ君!」
アケミ「お、お父さん!お母さん!」
タケル「お、お父さん!お母さん!」
二人は両親に向かって走り出していく。
アケミ「お父さん・・・・・お母さん・・・・どこに行っていたの?」
タケル「さびしかったよぉ・・・・・」
父「ごめんな・・・・・さびしい思いをさせて・・・・」
母「ごめんね・・・ごめんね・・・」
4人は抱きあって泣いた。
クリス「やば・・・・」
クリスも釣られて涙が出てしまう。
ソフィ「お姉ちゃんが泣いちゃダメですよ・・・・」
という、ソフィも声が震えている。
実親のいない2人にとって、こういう光景はすごくうれしい。
本当の家族の様に思えてしまうのだ。
クリスはソフィの胸に顔をうずめて涙を隠す。
ソフィもそれに答えるようにしっかりと抱きしめる。



父「本当にすいませんでした・・・」
母「なんとお礼を言っていいものか・・・・・」
エミカ「いえいえ、こういうことをお仕事にしていますから、気にないでください。」
深々とお辞儀をする家族たち。
どうやら、親の話によると田舎のおばあちゃんの家に行くときに飲酒運転をしていた渡来バーと交差点で接触事故を起こして家族全員が死亡したようだ。
家族みんなは即死して、父と母の遺体は見つかったのだが、なぜだか子供2人の遺体は見つかっていないという話だった。
ソマリア「じゃあ、導きの儀を行います。・・・・皆さん元気で暮らしてください。」
アケミ「うん、神様も天使様もお姉ちゃんも元気でね〜」
ぶんぶん手を振る。
この子達はこれから天の国に行く。そして、しばらくしたら霊力もなくなり、存在自体が消えるだろう。
霊は後に転生できるといわれているが、霊は転生できないのだ。精神が再び肉体に宿る事は無い。
しかし、消えるまでの間は家族水いらずに暮らせるはずだ。
天の国はそれこそ、欲望も権力も無い世界なのだ。
つまらない事件に憤りを出さなくてもすむし、不安に狩られる事も無いのだ。

何もかもが平穏の世界・・・・それが天界なのだ・・・・
ソマリア「汝はあるべきところへ帰れ・・・・・」
ソマリアがなにやら唱え始めた。
すると、家族の周りが光り始めてその光は家族を包む。
クリス「ばいばい。」
シュ〜・・・・・
ソマリアが唱え終わると、そこには家族の姿はもう無かった。




クリス「ねえ、ソフィ?」
ソフィ「なんですか?」
クリス「私たちの両親って私たちを生んだ瞬間に死んでしまったのだよね?」
ソフィ「そうだね・・・・お父さんも原因不明の死をしましたから・・・・・」
久々に2人で寝る。
2人は今日起きた事が頭から離れないのだ。
そう、なにかさびしい気分がするのだ。
クリス「私たちってかなりの親不孝者だよね・・・・」
ソフィ「そうですね・・・・・私たちを生むために死んでしまったようなものですからね・・・」
2人は、実際に親の顔を見た事は無い。二人が結婚する前の写真しか残っていないのだ。
しかも、両方の親、つまりおじいさん、おばあさんも早死をしていて両親のことがまたっく分からないのだ。
クリス「・・・・・・会いたいなぁ・・・・・」
ソフィ「・・・・・・ですね・・・・・・・」
2人は強い。
そう、肉体的にも、精神的にも。
でも、中身は普通の高校生。女の子なのだ。
親がうっとうしい事もあれば急に恋しくなることもある。
しかし、2人にはその親さえいない。
エミカという親代わりの存在はいたが、決して二人の親にはなれない。
だから、2人は思いっきり甘えた事もないし。思いっきり感情を出した事も無い。
しっかりしている。
そう、世間は言う。
でも、2人はそんなにしっかりしていない。
悲しいときは泣きたいし。怒りを感じたときは怒りたい。
でも、それを返す相手がいないのだ。
だから、クリスは冬のような何でも聞いてくれるようなパートナーを気になったりしたのかもしれない。
決して答えを求めているわけではない。
ただ、自分の意見を聞いて欲しいのだ。
それが、エミカだったり冬だったり・・・・・・・
2人には友だち以上の関係がいない。
いや、その作り方を知らないのだ。
だから、いつも友だちどまりになってしまう。


???「親不孝ね・・・・そう思ったことないよな?」
???「そうね、いままでちゃんと育ってくれてうれしいけどね。」
クリス「え?だれ?」
頭の上のほうから声がする。
ソフィ「だれですか?」
2人は起きて電気をつける。
父「久しぶり・・・・いや、はじめましてかな?」
母「始めまして・・・・わかるかな?」
2人の思考回路が止まる。
写真で見た人だ・・・・・
なぜだか分からないが、分かる。この人たちは私たち両親だ。
私たちに受け継がれている、蒼色の目。神谷家特有の栗色の髪の毛。
母から遺伝した大きな目。父から貰った小さな鼻。
クリス「・・・・お父さん?」
ソフィ「・・・・・お母さん?」
2人とも信じられないために疑問文になってしまう。
父「ああ、わかるかい?」
母「はい、初めてだから戸惑うよね。」
ソフィ「よく・・・・・戻ってきてくださいました・・・・・」
もう、見えない。
2人の顔には涙がたまって前が見えない。
聞き覚えは無いが落ち着く声。
もちろんここにいるのは幽霊なのだが、それでも2人には十分だった。
クリス「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
クリスは泣いた
ソフィ「うう・・・・・・・わぁぁぁぁぁぁ!」
ソフィも泣いた。
あのときアケミやタケルは泣いたように・・・・・
大きな声で・・・・・
大きな涙をながなしながら・・・・・
いままで、あえなかった不安を込めて・・・・・
二人は泣いた。
それを両親は優しく受け止めた。
両親の体温は冷たかったが、2人には暖かく感じられた。
そう、ここにいるのは2人の両親なのだ。

やっと会えたね・・・・
うん、会いたかった・・・・
いままで、会えなくてごめんね・・・・
ううん、二度と会えないと思っていたからすごくうれしいです・・・・
私たちは貴方たちに何もできませんでした・・・ごめんなさい・・・・
ううん、そんなこと無い。私たちを生んでくれた・・・・それだけですごくうれしい・・・・

ソマリア「・・・・ふう、ちょっと手間取りましたが・・・これでよかったのですよね?」
エミカ「うん・・・あとで神様からの説教だね・・・・・・」
ソマリア「私たちは天使ではなくて堕天使なんですね・・・・」
エミカ「ははは・・・・違いありません。」
隣の部屋でソマリアとエミカが静かに聞いていた。
最高のプレゼントを貰った子供たちの反応を見るために〜