「かわいい訪問者」
・第10話:「かわいい訪問者」



クゥーン・・・・
教会の前で犬は鳴いている。
時々人は通るが、皆知らないふりをして通り過ぎてしまう。
クゥーン・・・・
その犬の鳴き声はとても弱弱しい。
ソフィ「あれ?犬さんどうしまたか?」
やっと声をかけてくれる。
クゥーン・・・・
犬はソフィの前まで歩いてちょこんと座る。
ソフィ「犬さん・・・・野良犬ですか・・・・・最後まで、誰も見てくれなかったのですね・・・・」
ソフィはその犬を抱え込む。
クゥーン
ソフィ「分かりました・・・・最後は私たちが見送ってあげますからね。」
そう、この犬は霊だったのだ。命あるものはすべて死んだら霊になる。そう、植物も例外ではない。でも、植物の場合は精神という物が無いためにすぐに浄化してしまうのだ。
ギィィィ・・・・
ソフィは門を開けて中に入る。
クリス「あ、おかえり〜・・・・ってその犬どうしたの?」
クリスが出迎える。
ソフィ「ただいま〜、門の前で鳴いていたから連れてきました。」
クリス「野良犬かな・・・・・・かわいそうに・・・・・」
ソフィ「せめて、除霊の時だけは・・・・と思いまして・・・」
クリス「そうだね・・・死んでからも一人ぼっちはかわいそうだよね。」
こういう、動物の霊というのは大概、野良犬や野良猫などの一人さびし死んでいく動物が多い。霊なった動物は冬先もなくさまよい続けて、悪霊になるか、また悪霊に取り込まれるか霊力がなくなってきて言えいくかの二つしかない。
エミカ「あれ、2人ともそんなところで何をしているの?寒いから風引くよ〜」
ちっとも帰ってこないクリスを心配して、エミカが玄関にやってきた。
クリス「あ、はい。ソフィ、とりあえず部屋の中に行こうか。」
ソフィ「そうですね・・・・だいぶこの子も弱ってますからね・・・」
エミカ「え?どうしたの?」
ソフィ「門の前で犬さんを拾いました。」
抱いている犬をエミカに見せる。
エミカ「そうですか・・・・とりあえず、部屋に入りましょうか。」
3人は暖かい部屋に入った。
クリス「だいぶ霊力が下がってるね・・・・もう少しあれば何とかなったけど・・・・」
ソフィ「小さいですからね・・・・野良犬の子犬でしょうか?」
エミカ「たくっ・・・面倒が見れないなら飼わないでよねぇ・・・」
クリス「そうですね〜」
ちょこんと座る犬を見る。
その犬はおとなしく、じっとしたままだった。
エミカ「でも、この犬・・・・・・どこかで・・・・・・」
クリス「見覚えあるのですか?」
ソフィ「誰の子なんですか?」
う〜ん、とエミカがうなる。しかし、のどまで出ているのだが全然思い出せない。
トゥルルルルル・・・・・
電話が鳴る、
トゥルルルルル・・・・・・
カチャ
クリス「はい、神谷です。どちら様ですか?」
京子「神楽です。神楽京子。あの、今お暇ですか?」
クリス「え?私ですか?」
京子「はい・・・・あと、皆さんいますか?」
クリス「はい、いますよ。」
京子「これから重要な話をするので皆さんを集めてハンズフリーにしてもらえませんか?」
クリス「はい、分かりました。」
ピッ
クリス「ソマリアさん〜京子さんから電話です〜」
ソマリア「は〜い、今すぐ行きます〜」
遠くからソマリアの声がする。
エミカ「え?なんですか?」
クリス「神楽さんから電話で、重要な話があるから皆集まってて・・・・」
ソフィ「なんでしょうか?」
ソマリア「はい、来ましたよ。」
京子「皆そろいましたか?」
冬「って・・・なんで僕の電話番号知ってるの!」
なにやら、向こうの部屋は騒がしい。
クリス「・・・・ふ〜くん?」
京子「ふふふ・・・・気を取り直して・・・・実は、ここに冬樹様がいます。」
エミカ「え?」
ソフィ「冬樹様って・・・矢合観音の?」
京子「はい、そうです。どうやら、鬼海から逃げ出してきてここまで来たそうです。」
ソマリア「そうですか・・・・それは良かったです。それで、冬樹様の容態はどうなんですか?」
京子「外傷や目立った怪我はしていないので大丈夫と思います。かなり、霊力がなくなっていますが・・・・」
エミカ「冬樹様の霊力を吸い取ったから冬樹様はもう必要なくなった・・・・ということですか?」
京子「そういうことだと思います。」
クリス「ねえ、犬の様子が・・・・」
さっきまでおとなしかった犬がいまではそわそわしている。
ソマリア「この犬さんはどうしたのですか?」
ソフィ「門の前にいたので連れてきました。」
ソマリア「・・・・霊力を分けてあげましょう・・・・苦しかっただろうに・・・」
そういうと。犬の頭に手を置いて祈り始める。
京子「犬・・・・ですか?」
ソマリア「はい・・・・しかも、この犬はただの犬ではありません。」
パァァァァァァ
どんどん犬が大きくなってくる。
ソマリア様・・・・・ありがとうございます・・・・・もう霊力は結構です。
と、
脳の中に声が聞こえる。
クリス「え?だれ?」
ソマリア「この犬・・・・狼さんは冬樹様の守護霊ですよ。」
そこにはさっきの犬はいなくて変わりに白い毛並みの狼がいた。
ソフィ「わ・・・狼さんだったのですか?!」
エミカ「あっ・・・そうだ、冬樹様の守護霊だ!」
狼「はい・・・私は夏樹様の守護神をしています。白(ハク)です。ソフィ殿・・・助けていただいて・・・ありがとうございます。」
京子「あ、そっちには白さんもいるのですね?」
ソマリア「はい、霊力は回復させたので、大事には至っていませんよ。」
京子「分かりました。夏樹様に伝えておきますね。」
ソマリア「よろしくお願いします・・・・それで、鬼海について何か分かりましたか?」
京子「はい、冬樹様が詳しく教えてくださいましたので。」
京子「まず、いまの鬼海の状態ですが、鬼海は私たちの予想に反してもう繭を解いています。これは、かなり早いスピードで鬼海が強くなっている事が分かります。また、鬼海は繭を解いてもなお、周辺の霊や人間を襲って霊力を集めているとの事です。」
ソマリア「・・・・・・・」
京子「冬樹様の考えではいまの鬼海の力は史上最悪で夏樹様の10倍は超えると考えているそうです。」
ソマリア「そうですか・・・・・」
京子「これから、お互いに厳しい戦いになると思いますが。力を負わせてがんばっていきましょう!」
ソマリア「そうですね。がんばりましょう。」
京子「では、これで失礼しますね。」
ソマリア「はい、分かりました。おやすみなさい。」
京子「では〜」
ブツッ!
ツー
ツー
ツー
クリス「大変なことになっているみたいですね。」
ソフィ「10倍ですか・・・・・」
白「申し訳ない・・・・・」
エミカ「いえ、白さんは悪くないですよ・・・・・」
ソマリア「あの、話づらいと思いますが、矢合観音が乗っ取られる経緯というのも教えていたけませんか?」
白「はい・・・分かりました。」
白「あれは1ヶ月ぐらい前の事です。鬼海は突如私たちも前に現れました。まだ力は冬樹様と鬼海は五分五分で、危ない場面もありましたがなんとか優勢になっていたのです。


冬樹「鬼海!これで最後です!」
冬樹は手に霊気をこめてその弾を発射させる。
ドプゥゥゥン!
鬼海「あぶなかった・・・・・しかし、このままむざむざやられるわけにいかん・・・」
惜しくも冬樹の攻撃は当たらなかった。
白「観念しろ!また続けるならば容赦はせぬぞ!!」
グルルルル
白も唸って威嚇する。
鬼海「ふ・・・誰が観念するものか・・・・・」
ドシュ!
なんと、鬼海は観光客の一人の魂を抜き取ってしまう。
ドサッ!
魂を抜き取られた観光客はその場に倒れこむ。
白「貴様!何ということをしたんだ!!」
冬樹「貴方は・・・・絶対に許さない!」
鬼海「ふふふ・・・・回復するのにはこうのほうが手っ取り早い。」
次々に観光客から魂を抜き始めた。
白「貴様・・・・・」
ダダダダ!!!
白が突進して噛み付こうとする。
鬼海「ふ・・・・これだけ回復すればお前には勝てる・・・・」
バシン!!
鬼海は背中にある大きな手を振って白を飛ばず。
ドコォォォン!
壁の一部に穴が開く。
観光客「わ!・・・人が倒れていく・・・・」
観光客「いや、お寺なんて・・・ひとりでに崩れていくぞ!」
観光客はパニックになって悲鳴、叫び声とともに逃げだそうとする。
冬樹「あなた・・・・こんな事をやって楽しいですか!!」
鬼海「ああ、楽しいさ・・・・忌々しい人間を蹴散らす事がどれだけ快感なことか・・・・」
といいながら、魂を抜き取る。
お寺の前には10〜20人ほどの死体の山ができる。
白「貴様・・・・・」
ダダダダ!!
怒りに任せて白が突っ込んでいく。
バシン!
しかし、またもやはじかれる。
冬樹「そんな馬鹿な・・・・霊力が激増しているなんて・・・・」
鬼海「ふふふ・・・・・これで我は元通りだ・・・・」
鬼海の霊力は常に増えているのだ。
いまでは軽く冬樹を超えている。
鬼海「いくぞ・・・・冬樹・・・・・!!!」
白「冬樹様!お逃げください!!」
ドッ!
白が言う前に冬樹の体は空に舞っていた。
冬樹「え?今何をした・・・・・・」
鬼海「はははは・・・・・神といってもこのぐらいか・・・・弱いな・・・・」
ブロロロロロ・・・・・
一台のバスが鬼海の後ろの道路を通りかかる。
鬼海「お前も協力してもらうぞ・・・・・」
ブワッ!
すると、バスが浮き上がり、敷地内に入ってきた。
冬樹「え?なに?」
ガガガガガガガ!
バスは転倒して次々と観光客を引いていく。
白「貴様ァァァァァ!!」
白が息を荒くして威嚇する。
鬼海「あっと、外で待てよ、これ以上攻撃するようだったら・・・この近くにいる物全員を殺す。」
冬樹「なに・・・・・・」
鬼海「あと、冬樹が我がものになるならば、ここに倒れている者すべての命を返そう・・・どうだ?悪くは無いだろう・・・・」
冬樹「・・・・・・本当に返すのだな?」
白「だめです!そんな言葉に乗ってはいけません!」
鬼海「でも、ざっと、ここで死んだ人の数は100人ちょっとか・・・・そいつらを見殺しにするのか?」
白「く・・・・・・」
冬樹「分かった・・・・まず、魂を戻してください・・・」
白「冬樹様!?」
冬樹「・・・・・どの道、この鬼海には勝てません・・・それならば一刻も早く魂を返すべきです・・・・・」
冬樹はうつむいて話した。
冬樹が決めた以上、白には反論する事はできない。
鬼海「ああ、分かった・・・・・」
鬼海の中に入っていた魂がそれぞれのところに戻っていく。
冬樹「白・・・・後は頼みましたよ・・・」
さっきまでの威勢はどこ言ったのか、冬樹の声が弱弱しくなる。
うっすら涙まで浮かべている。
白「私もお供します。」
冬樹「白!」
白「私は冬樹様の守護神です・・・どこまでも付いていきます。」
冬樹「白・・・・・」



白「という事で、私たちは鬼海に取り込まれる事になったのです。」
クリス「・・・・・・・・」
ソフィ「・・・・・・・・」
ソマリア「そうだったのですか・・・・・」
エミカ「大変だったのですね。」
白「いや・・・不甲斐ないばかりに・・・・・・・・」
クリス「許せませんね・・・・・関係ない人を使うなんて・・・・・」
ソフィ「だから、鬼海の発見が遅れたのですね・・・・冬樹様が自分から取り込まれることを選択したので・・・・・」
白「はい・・・・」
ソマリア「白さんはこれからどうしますか?」
白「失礼ながらしばらくここにいてもいいですか?まだうまく力を出す事が出来なので・・・」
エミカ「分かりました。」
白「すみません・・・・」
クリス「いえいえ、困ってるのにたたき出す事はしませんよ。」
ソフィ「困ったときはお互い様ですよ。」
白「そうですね。はく回復するようにがんばります。」
クリス「それでも、なんで子犬の格好をしていたのですか?」
白「私はもともとここの土地にいた山犬のボスだったのですよ。だから、普段は犬の格好をしていたわけなのですが、霊力に合わせて大きさも限られてしまって・・・・」
ソマリア「私が霊力を与える前はほとんど霊力が無くて喋る事さえもできなくなってしまったようです。」
白「はい・・・・でも、冬樹様のご無事が分かって一安心しましたよ・・・」
エミカ「そうですよね。ご主人様が無事と分かったらうれしいですよね。」
白「はい、じきにあなた方もあの鬼海にたたかいを挑むと思いますが、決して油断しないでください。鬼海は霊力も高いですが、それ以上に知能を持っています。」
クリス「そうですね・・・・気をつけないといけませんね。」
ソフィ「はい、わかりました。」
白「あと・・・・このお2人が今の修道僧ですか?」
エミカ「はい、そうです。」
白「これを・・・・・」
白は首にかかっている小さな布製の袋をクリスとソフィの前に落とす。
クリス「・・・・・十字架の形をした水晶ですか?」
きれいな透明な水晶が中から出てくる
白「はい、ずっと昔に貴方の祖先からいただいた物です。日本ではまず出る事の無い十字架の水晶の石です。」
水晶はどこでも取れるのだ。それもいろいろの形の物が、しかし、日本には十字架の形をした水晶がまったく出ない。そう、ヨーロッパとかエジプト、とかいさまざまな地域でも出てくるのに、なぜか日本では出てこないある意味貴重な水晶だった。
ソフィ「きれい・・・・・」
白「700年ぐらいまで預かっていましたが、鬼海に負けてしまった以上、私たちにはとても勿体ない物になってしまいました。」
クリス「これをご先祖様が?」
白「はい、お二人と一緒の様に双子でした。」
ソフィ「そういえば、私たちの祖先は神楽家と仲の悪いと聞きましたが・・・・」
白「そうですね・・・・・・仲のいいときと悪いときがありましたね・・・・」
クリス「それって、どういうこと?」
白「そう、今から300年前には神楽家と神谷けはすごく悪かったようですよ。」
ソフィ「300年前って・・・・鬼海のいた年ですね・・・・」
白「はい、そのときにたたかて・・・・・」
ソマリア「んんっ!白さん・・・・」
ソマリアが咳払いをして静止する。
白「あ、すみません・・・・・でも、いいのですか?真実を教えなくて・・・・・」
ソマリア「知らないほうが幸せという事もあります・・・・・」
クリス「え?なんですか?」
ソフィ「どうしたのですか?」
エミカ「そのときに何か起きて中が悪くなったのですよ。」
クリス「ふ〜ん・・・・」
ソフィ「鬼海を倒したのに仲が悪くなるのですか・・・・?」
ソマリア「まあ、あの時は事情が事情でしたからね・・・・・・」
ソマリア(また、あの過去を繰り返さないためにも・・・・・)




そう、まだ2人はこれから起きる最悪な事態を知らなかった。
いや、今知ってしまうと。
未来が救われないかもしれない。
そう、ソマリアたちは彼女たちを悲しませないためにあえて言わなかったのだ。
彼女たちは未来を背負っているのだ。
気持ちを曇らせてはいけない。

しかし、残酷にも時は過ぎていく。
だれも止めてはくれない。
そう、あの日に向かって・・・・・